ここ数年、年末になると「来年は何の(演劇)作品から観始めようか」と考えている。年明け早々、面白い作品に当たれば、「今年の演劇〝運〟はいいかもしれない」と喜び、そうでなければ…(以下略)。
それはともかく、BLOCHが毎年のように企画している一人芝居フェス『LONLY ACTOR PROJECT』(以下、ロンリー)のシリーズは、1作品約20分前後の作品なので気軽に観ることができる上に、私にとっては役者や作演出家の「先物買い」のような存在だ。今年、このコーナーでインタビューした井上悠介(きっとろんどん)や、2019年夏の札幌演劇シーズンに参加予定の野村大もロンリー経験者。さらに過去を探ると、2011年には、AND(※マサコさん注 亀井健が劇団コヨーテの前に立ち上げた劇団です)やyhsも出ていたという。まあ、27回もやっていたらそうそうたる役者が関わっているのは間違いないし、企画し続ける和田研一代表の労力もなかなかのものだと思う。
さて、年明けに行われるロンリーの『vol.27』では、4作品が上演される。そのうち、『男性坂田と複数女性』の作演出を手がけるのが、北海道教育大札幌校の「演劇集団空の魚」に所属する松重有紗。個人的に、数年前の高校演劇石狩支部大会に生徒創作の作品で参加していたのを観ており、その舞台がとても印象に残っている人でもある(※マサコさん注 その時、松重さんの前髪が半分金髪だったのも印象的だった)。今年、同じ大学の先輩でもあるきっとろんどん・井上くんの下で、舞台の演出補佐を経験した松重さん。ロンリー初参加への思いを語ってくれた。
松重有紗さん
今年、BLOCHで上演された演劇ユニット「シドビヘ」の『落ちる男』(作演出は井上悠介)で、演出補佐に初めて入りました。その時、BLOCHのパンフレットに年明けのロンリーへの参加者募集の告知を見つけて、和田さんに聞いたら「学生枠がある。やりたいならやってもいいよ」と言われたのが参加のきっかけです。
実は、ロンリーで上演する『男性~』は、コンカリーニョで行われている『最強の一人芝居フェスティバル INDEPENDENT』に出ようと思って書いていた本です。大学の同級生で、今回一緒にロンリーに参加する佐藤(優将。劇団米騒動)くんが、2018年の『INDEPENDENT』札幌予選に寺地(ユイ。気まぐれポニーテール)さんの手伝いで関わっていて、私と「出てみたいね」と話していたんです。私も「面白そう」と思って本を書き始めましたが、その後、しばらくしてからロンリーの学生枠の存在を知って、まずはこっちに出てみようかなと。佐藤くんも「書いたら出るよ」と言ってくれて、実現しました。
『男性~』の主人公「坂田」は、とりあえず結婚したくて、合コンに行く29歳の男性です。この本を書くとき、最初は笑っていても、いつの間にか笑えなくなる話にしたいなと思いました。例えば、日常生活の中で周りを見ていて「あの人、能天気だな」と鼻で笑うことがあったとします。でも、それって自分に当てはまる部分もあるんじゃないか、と思うんです。結婚したい坂田についても、なりふり構わない姿を笑っていたら、いつの間にか自分と重なるところが出てきて、「他人事だけど、オレも同じじゃん」ってなればいいなと。前半はコメディーで、後半はがらっと雰囲気が変わるようにしたいなと思っています。
出演する佐藤くんは、演出の立場でいろいろと言うと、「いいよ~」ってすぐにやってくれます。すごく頼もしい。昨日(取材の前日のこと)は、友達に通しを観てもらって、「観に来るまで不安だったけれど、その不安は消えました」と言われてホッとしました。だけど、時間は20分オーバー。場面を削ったりして書き直ししています。
実を言うと、初めての一人芝居の本は書き進めることができませんでした。だけど、その中で自分が変わっていくんじゃないかなという期待もありました。だからこそ、今回の本を書く作業や稽古の過程が、今後の自分に大きく影響するんじゃないかとも考えています。一方で、井上くんの下で勉強して、自分がどんな演出をしたいかも考えていきたいです。私の周りでも劇団を旗揚げしている人が結構いて、自分もしようかなと思っているけれど、いろいろ迷っているところです。
今回のロンリー、私以外の作演出はそれぞれ活躍している人ばかり。大丈夫だろうかと不安になりますが、私が一番経験が浅いから何をやっても許されるんじゃないかな~とも思っています。
12月19日に取材
●松重有紗
まつしげ・ありさ。1998年生まれ。札幌啓明中、札幌南高と演劇部に所属。北海道教育大札幌校に在学中。大学の演劇サークル「演劇集団空の魚」に所属。
●『LONELY ACTOR PROJECT vol.27~2019年 新春 松の内公演~』
・演劇専用小劇場BLOCH
・2019年1月4日(金)18時、5日(土)14時開演
・上演時間~100分の予定
・一般前売1800円(当日2000円)、24歳以下前売1500円(当日1800円)、 高校生以下900円
・作品名と出演者など 『男性坂田と複数女性』(作演出:松重有紗、出演:佐藤優将)、『55年目』(作:遠藤雷太、演出:しまだあきひろ、出演:野澤麻未)、『亜光速ラブストリーム~未来からの予告状』(作演出:サイトータツミチ、出演:キャス太)、『猪突盲信』(作演出:IJIN、出演:猪股五郎)
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text by マサコさん