昨年11月下旬に観た作品ですが、サボっていたわけではありません(言い訳)。
本作について、ふわっとした感想がTwitterで流れていたのを見たのだけど、本作はふわっとした感想は似合わないと思う。特段、ふわっとさせる理由がないからだ。話がずれるが、何だか手応えがないとか、理解できなかったとか、という演劇作品についてのツイートに、「ふわっと」したものが多いように思う(札幌は特に)。「よくわからなかった」とか「イマイチ」などという感想ではダメなの? いち観客の素直な感想ほど、劇作家や演出家、役者は喜ぶものだと思うのだけど…(むしろ札幌は、褒められたいか)。
閑話休題。
本作は、〝前衛的〟といわれている「AAF戯曲賞」の、本年度の1次審査を通過している。私は戯曲として読んでいないけれど、本作が1次審査を通過したのはわかるような気がする。85歳の女の子と戦争から戻ってきた男(…という設定でしたよね?)の純愛が美しかったからだ。しかし、戯曲で評価されただろう点と実際の上演には、ズレが起きていたと予想する。それは、85歳の女の子を演じたのが、ナガムツさんだったからだ。
ナガムツさんの演技が悪かったのではない。観劇後、本作を頭の中で反すうして、「85歳の女の子」は「若い女子」が演じた方がしっくりくる、と気付いた。85歳だけど気持ちは女の子→その気持ちが外見に出てきているけど本当は85歳、という見立てだと、その時から時間が止まってしまったような「女の子」の存在に奥行きが出る。過酷な目に遭ってきてすっかり年を取った男と、「女の子」の気持ちのまま待ち続けた85歳とがやっとこさ再会できたシーンにも、それこそ「亀井ワールド」と称される美しさが生まれたのだと思う(演劇ならではの演出、見立てですが、大いに妄想が入っています)。というわけで、ワタクシは、若い女子が「女の子」を演じるバージョンを観たいと熱望しております。
その他、目を引いたのが大和田舞の演技だ。私の中で彼女は、ギャグを言っていたり捨て身だったりと、コメディー路線のカテゴリーに入っている役者だったが、本作を動かす重要な役をしっかり担っていたと思う。ただ、バスの場面で、せりふを言う度に白目になったり、おかしな表情をするのは余計かな、とは思ったが。
あと、劇団しろちゃんの役者がたくさんでていて、BLOCHの舞台がとても狭く感じたのだけど、必要最低限の人数と、ほぼ素舞台でやった方が、この戯曲の良さが際立つ予感がする。
・2018年11月30日、BLOCHで観劇
text by マサコさん