1925年(大正14年)に発表された岸田國士の戯曲「命を弄ぶ男ふたり」は翌26年(同15年)に初演された二人芝居だ。大正は15年12月24日で終わり昭和の世を迎える。このたび、平成最後の年に斎藤歩(札幌座)と納谷真大(イレブンナイン)の「命を弄ぶ男ふたり」が現れた。演出は納谷で(株)tattの小島達子がプロデュースした。
斎藤は納谷に出会い、運命を感じたのだろうかコンビを組んで昨年12月に札幌市民交流プラザのオープニング事業として「ゴドーを待ちながら」を演出、上演。札幌演劇史の画期を成す成果をあげた。迷コンビと自称しているが、大いに受け入れられ気をよくしている二人だ。この二人が早々に次作としたのが「命を弄ぶ男ふたり」だ。
演出の納谷は「命を弄ぶ男ふたり」を大好きと言い、5年前から何度も上演している。斎藤と演じるのは初めてだ。二人は身体が大きく、舞台に並んでたつと映える。年齢も近く斎藤が4歳年長だ。納谷は「自分の演出がリスペクトする斎藤歩に通用するのか、ぶっちゃけわからないが前のめりになって攻める。」と臨んだ。納谷は気炎万丈の男だ。
自殺をしようという男二人が夜、鉄道線路の土手で出会って減らず口をたたき合うという芝居。顔中包帯の男が納谷、眼鏡の男が斎藤だ。それぞれ状況は深刻だが滑稽味がにじむ。ストレートに繰出す納谷と脱力系の斎藤、それぞれの所作が面白く呼吸は絶妙。セットはむき出しの平台を積んだ土手が正面にありそこを二人が登ったり下りたり、線路を覗きこんだりする。二人はそれぞれ、飛び込みも敢行するがささいなことでうまくいかない。土手をよじ登って生還した斎藤のこちら側への階段落ちもあった。
二人の衣装は今様のジャケット姿で大正末を感じさせない。むしろ平成末である。 それぞれの自殺願望は色恋や結婚など女性を巡って思い詰めたものだ。身体が受ける災厄、自責の誠、そして捨身の奉仕という普遍の生が浮かび上がった。
2019年3月3日(日)14:00 シアターZOO
text by 有田英宗(ゲスト投稿)