気持ち悪いけどクセになる 信山プロデュース『噂の男』

いやー。
噂の通り、酷い話だわー。
でも、ここまで酷いと逆に、「これ実話では?」と思ってしまう。

演芸場の薄汚れた舞台裏。
売れている芸人は神。
売れてない者、下っぱは絶対服従。
無駄にスマートな支配人。
ありそう。
いや、これあるでしょう、普通に。

現在と過去を行き来しながら、過去の死や暴力が暴かれていく。
現在進行形の暴力は、今このときにも目の前で。

暴力とは、殴ったり、髪の毛掴んで引きずり回したり、そういう直接的なことばかりではない。
相手の柔らかい心を掴みあげて、ぐっちゃぐちゃに踏みつける。

気持ち悪い。なんだこの捻れまくった世界は! 

関西特有のノリツッコミで笑わせるのと、独特の沈黙の間(ま)がなんとも言えず不穏な空気感をにじませる。

自分が笑ってるんだか怒ってるんだかわからなくなる。

2時間超の芝居にもかかわらず、一時も気を抜けない、目が離せない。

バイオレンス、笑い、倒錯と、これでもかと見せつけられて、惨憺たる最後の場面も「8時だョ!全員集合」の前半コントの最後みたいで、なんだかじわーっと笑えてしまうのは何故だ?

でも、ほんとの最後に、ぞ―っとして、哀しくなった。

バイオレンスとやっぱり愛の物語だったのね、と。
 
 
2019年4月19日 19:30  於:コンカリーニョ

text by わたなべひろみ(ひよひよ)

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