やられっぱなしで終わらない。ブス会*『男女逆転版・痴人の愛 リーディング公演in札幌』

ススキノのお寺を会場に、谷崎潤一郎『痴人の愛』をベースにした作品を、リーディングで、女優・安藤玉恵が演じる。もう楽しそうな要素しかないな、と期待して観に行ったところ効果的な照明・臨機応変な生演奏も加わって、密度の濃い公演でした。あっという間の1時間強。

『男女逆転版~』は時代を平成に移し、大学教員・洋子が美少年(でも名前はナオミ)を自分の理想のままに育てようとするもままならず、翻弄されていく話。SNSなど原作にはない要素を取り入れつつ、台詞の半分以上はほぼ原文ママ(それでも成立するのがすごい)とのことで、原作通り徐々に主従が逆転して、このままお金を毟り取られていくのね…と悲しい気持ちで観ていたら、ラストが全然違いました。女は、やられっぱなしじゃなかった。あんなに酷い扱いを受けてもナオミに執着する気持ちが、私にはよく分からなくてモヤモヤした分、最後の一矢報いた終わり方に「いいぞー!」となりました。

 

終演後、隣にいた方が「最後どういうこと?マスターの子?」と話していて(連れの方から、ナオミの子だよ~と怒られていましたが(笑))あ、それもありだなと思いました。勿論ナオミの子だろうけど、自分が産んだ子なら誰が父親でもそれは洋子にとって新しい「ナオミ」なんだろうな、と。自分が産んだナオミ。今度こそ100%自分に帰属するナオミ。それって母性愛とか所有欲とかを(歪んでいるけど)満たしてくれる、最高の存在じゃないですか?最後は満ち足りた顔で、もう一度始めから育て直す場面で終わりでしたが、果たして今度の「ナオミ」は上手くいくかなー。

2019.5.18(土)13:00- 新善光寺

text by うめ

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