札幌演劇シーズンに先駆けた1回のみの「シンデレラ」清田公演とその1週間後の都心の「シンデレラ」、両方を見物した。
清田公演は未就学児童から祖父母まで世代を超えた300人超のお客様が来場して熱気に溢れたものになった。さらに、当日運営に30人もの高校演劇部部員のお手伝いがあり、受付や会場誘導にあたる若人の姿は高齢化ニッポンにあって頼もしく好感を持たれたようだ。
両「シンデレラ」とも、舞台美術はすべて豊平と清田にあるペングアートの子どもたちが描いた絵でこれが圧巻、満艦飾という言葉を想起した。
今年の初演、シンデレラ清田公演はしぼりたての芳香を放った。
健気なシンデレラ、奔放な姉たち、神の使いの鳩、一途な王子、それぞれの身体と思いが交錯し、老若男女が詰めかけた会場の反応もおのずから賑やかなものとなった。
演劇シーズン、都心の「シンデレラ」は札幌市民交流プラザ クリェイティブスタジオで。清田は講堂様式の舞台だが、都心は平場のステージを客席が包み込み見やすかった。芝居は清田よりしっとりとしてきて劇の熟成を感じた。
清田は舞台下のマットに陣取る親子が舞台を見上げるが、都心は平場のステージと、その前のマットに境界線がなく陸続きだ。劇の途中で王子さまがマットまでお出ましになり、子どもたちに高い、高い(リフト)をしようと促すがなぜか都心の子どもたちは尻込みして乗ってこない。清田の子どもたちは臆することなく、立ち上がりポーズを決めて王子のリフトに身を任せたのは素晴らしかった。
グリム童話「灰かぶり」を原作に斎藤歩が斎藤版「シンデレラ」を創った。エピソードを加え音楽もすべて斎藤の作曲。嫋々たるメロディはシンデレラの心情をよく表して熊木志保の歌唱も良かった。横尾寛の鳩は一番人気であった。神の御使い、平和の象徴、シンデレラを助けて余すところがない。
姉たち二人は櫻井幸絵と西田薫が妍を競った。カサンドラとエレクトラと称していた。これは意味深長な名前だ。それぞれに、コンプレックスを付ければユングの分析心理学の世界だ。そこから、物語は夢のなかへ入っていく。
シンデレラは女子の変容、成長の物語だ。毛虫が蝶になる、美しい変容だ。
だからシンデレラは健気であるのがいい。変身は母性を持って完成するのだろうか。
劇にお父さん、お母さんは出てこないのだが。
それにしても、その完成に櫻井ヒロの王子様は必須の存在だ。大胸筋、僧帽筋、上腕三頭筋のリフトがなくては変容は完成しない。
第13回清田演劇のつどい 札幌座番外 清田公演 劇のたまごぐりぐりグリム「シンデレラ」
2019年8月12日(月・祝) 14:00 清田区民センター
シアターZOOプロデュース 劇のたまごぐりぐりグリム「シンデレラ」
2019年8月19日(月) 15:00 札幌市民交流プラザ クリェイティブスタジオ
text by 有田英宗(ゲスト投稿)