独自の脚色いろいろ:OSFその3『マクベス』

アッシュランド、オレゴン・シェークスピア・フェスティバル その3

https://www.osfashland.org/en/productions/2019-plays/macbeth.aspx

演出 ホセ・ルイス・ヴァレンズエラ

マクベス役、ダンフォース・コミンズは見事。レディマクベス役、エイミー・キム・ワシュケは、キリッとした韓国美人風で熱演。特に演出家がわざわざ舞台上にもってきたレディマクベスの死のシーンは美しかった。オリジナルでは、死んだと告げられるだけだ。

他にもこの演出家は、独自の脚色を持ち込んだ。冒頭にマクベス夫妻の子の葬式シーンを入れたり、マクダフ夫人と息子の殺害シーンをかなり残酷に舞台上で見せたりした。マクダフ夫人のお腹を切り裂き、胎児をつかみ出す、というものだった。マクダフがマクベスの首を落として掲げる、というシーンもあった。そして、魔女3人は、けっこう親切で、常にマクベスらと共に舞台上におり、人々を見守っているのだ。マクダフ母子に「逃げなさい」と忠告にまで行っている。百歩譲ってそれはいいとしても、この魔女らには上司がおり、その魔女の女王が、「なにグズグズしとるんじゃ~」てな風にハッパかけに出てくるのだが、これがいけない。児童劇の悪い女王みたいに、うぇ~と両手を振り上げて怒りを表現している。それをやられた瞬間、私の中のマクベス、スコットランドは消えた。せめてスコットランドの草原から流れてくるような音声のみにして、姿はなくていいのではないか。直後、魔女の女王を演じた女優が、魔女の毒々しいアイライナーもそのままに、子供と共に殺害されるマクダフ夫人を演じているのだが、これは酷い。ミスキャストも甚だしい。マクダフ夫人は穏やかで無力な女性だからこそ可哀相で、マクダフの悲しみと怒りに共感し、マクベスを倒すのは彼でよろしい、ということになるのだ。

これを切々と訴えた私のコメントに、一瞬クラスはしんとなった。それ以外はとても良かったけどね、と強調するも虚しい。いやいや、それもあれも含めてホント面白かったのに。

女優のエイミーによると、演出家は、本物のオオカミも要求したそうだ。結局、予算が足らず却下となったが、この要求を強く粘っていたらしい。どう使うつもりだったのか、と聞くと、終盤、マクベスが一人になり城でモノローグする際に、オオカミがウロウロし、お前も俺もロンリーウルフさ、なんていうセリフを付け加えるということだったらしい。却下して正解だ。

2019年8月3日 Mountain Avenue Theatre

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text by やすみん

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