劇団パーソンズ「またね、」をレッドベリースタジオにて。
田舎の高校を舞台とした物語。淡々と日常が続くけど、当然ながら確実に人間関係が変わるし、人によっては生き方も変わっていく。語られる事件を考えると、全体がエピローグみたいにも感じるけど、大きな事件が終わっても日常は続くということか。
過去の事件の責任を感じ、女性に積極的になれない教師と新任養護教諭との距離を置いたぎこちない会話がいい感じ。他の会話はスムーズなのに、ここだけ昔の小説から抜き出したような堅苦しいやり取り(笑)。互いの距離感を測りかねている感じが伝わってくる。
セットの机と椅子は手作りっぽく仕上げ、BGMや効果音もおもちゃのピアノやリコーダー、ビアニカなどを使い、素朴さを前面に出した作りで物語の舞台にマッチしていると感じました。登場人物には悪人もおらず悪意も無いけど、善意あふれる中でも、人は過去に囚われたり、未来の不安にたじろいたりする。もちろん、それでも未来に進んで行くのだけど。
結婚式のスピーチじゃないが、この芝居の終了時点が次の物語の始まりになるわけで、いわば次の物語のプロローグ。そうなると全体がエピローグかつプロローグという事にもなり、実は長い長い物語の幕間を描いたものなのかもしれない。冒頭に暗闇の中で、台詞のみで過去の事件を表現していたけど、劇中では大きな事件は何も起こらない。少しずつ変わっていく日常が淡々と進んで行くだけといえばそうなんだけど、観終わったあと何か暖かい気持ちになる、そんな作品でした。
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2019/09/05 19:30
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レッドベリースタジオ
text by 小針幸弘