このお芝居は昨年2月、教育文化会館小ホールで観劇しているので2度目である。1年半ぶりとなるが、劇団としては6回目の公演らしい。
シェイクスピアを専門にする大学教授、奥坂雄三郎に永井秀樹(青年団)、コミュニティFMの気象予報士・DJの冬樹里絵に岩杉夏(ディリバレー・ダイバーズ)、雑誌『セロリ通信』の編集長である沓掛あかねに小林なるみ(劇団回帰線)、奥坂の助手である鹿鳴のり子に柴田知佳、研究生、堺鶴男に遠藤洋平。役者さんは前回と同じだったので、全員の息がピッタリだった。
前回は教文小ホールで、少し離れたところから観たが、今回は前列4列目と、いわば「かぶりつき」の座席(全席指定)。役者さんの細かい表情が見えて臨場感抜群。ストーリーが分かっていてものっけからのめり込んでしまった。
圧巻は冬樹里絵が奥坂教授の研究室でシェイクスピアの特別講義を受ける場面。それまで「ロミオとジュリエットなど駄作だ」と主張していた奥坂教授が、何とか冬樹里絵に自分の方を向いて欲しいと願い、強引な解釈を押しつける場面。シェイクスピアの恋愛ものを否定し続けた奥坂教授。「なぜロミオは死を選んだのか」という質問を冬樹に発する。「愛のため」という冬樹の回答に「それは違う!親切心だったのだ」とのたまう奥坂教授。「愛は死んでも親切は死なない」などと、屁理屈を押しつける。観ているこちらが思わず「おいおいおい」とツッコミを入れたくなる。
ドタバタとした中での奥坂教授の最後の一言に思わず胸キュンである。 台詞も演技も間の取り方もかみ合っていた。 純情っていいよなぁ。
前回も感じたが、6つのシーンをコンパクトに展開し、無駄を排した展開は小気味よさを感じさせてくれた。BGで挿入されるジャズも心地よかった。
真ん中にシェイクスピアの肖像画が配された舞台装置も教文と一緒。むしろ、実際にも大学の研究室はそれほど大きくないので、サンピアザ劇場の舞台サイズにピッタリだったように感じた。
やや残念だったことは、終演後に振り向くと、座席の後ろ側が空席が多かった。マチネということもあったのだろうが、教文では300席が満席だったことを思うと残念だった。
この芝居、9月26日は帯広市民文化ホールで上演した(はず)。10月4日から7日までは東京こまばアゴラ劇場で上演するという。札幌の劇団によるこんなにステキな作品を、札幌以外の皆さんにぜひ観て欲しい。
2019年9月22日14時 サンピアザ劇場
上演時間:95分
text by 熊喰人(ゲスト投稿)