先に書いておきます。「長い」です。
先般のツイートの通り、審査員でも呼ばれたわけでもないけれど、全道大会を観に釧路まで行ってきました。釧路駅とホテルと会場だけを行き来するという〝超インドア〟な3日間でしたが、4時間かけて行って良かったです。
結果は以下の通りです。
https://twitter.com/sapporo_kangeki/status/1196225940931497984
https://twitter.com/sapporo_kangeki/status/1196226547453026304
今年は石狩支部の審査を務めたので、どちらかというと支部大会で選んだ5校の成長を見守る「母目線」でした。どの学校も支部大会よりもステキな舞台になっていました。その5校について振り返ってみます(ツイートと重複する内容もあります)。
・立命館慶祥『演劇という名の絆で繋がる者たち』
演劇部が舞台。大会を前に「台本を書く」と宣言した顧問が姿を消した。「私が書く」と宣言する鈴木と、それに同意しながらも既成脚本を探し出す尾崎の2人が、3年生の今と、1・2年生の過去を行き来しながら、「自分たちにとって演劇とは何か」を見つけていく。テンポ良くコミカルに展開するのが一番の強み。が、「マイク問題」でセリフが聞き取りづらかったのが残念、私、支部大会の時から、尾崎の図太さと弱さの表裏一体ぶりがいいと思ってました。もちろん、パーンと弾けている鈴木も大好きです。
・札幌北斗『お母さんの彼(ハハカレ)』
約30年前に死んだ京子の彼・広志が、京子の娘・七海の彼氏に乗り移って会いに来る。私が札幌北斗を観始めてから、一番コメディー色が強い作品。母と娘の仲の良さを程よいボケツッコミで描き、アクションあり、平成元年放送の「高速戦隊ターボレンジャー」も出てきたりと飽きさせない。観客に何一つ疑問を抱かせずに物語を展開していくのは、本と同じくらい演技や舞台周りのスタッフワークが充実しているからだと思う。にしても、泣いた。3年生が卒業する前に、もう一度上演してほしいです。
・新篠津高等養護『オツベルの象たち』
家庭が裕福ではない山本が大学進学をかなえるため、工場でバイトをしている。そこに、養護学校を卒業した上村が入社して山本が面倒をみることになる。やがて山本も上村も工場長も「何かに搾取されている」ことが見えてくる。支部大会でよくわからなかった「牛飼い」の立場が明確になり、彼が山本を突き放しているのか見守っているのか、観客に想像させるような存在になっていたのがとても良かった。私の周りでは、養護学校の生徒たちを「かわいそう」(言い方はそれぞれ違いますが、まるっとまとめるとこうなる)と見る人が多く、養護学校の生徒たちが演じる物、描く物を手放しで褒める。「それって全然違うから」と声高に言うよりも、この作品を見せた方が説得力がある。
・札幌創成『ジゲンを超えて』
コミュ障のジゲンが二次元の温かさを求めて「二次元」に向かう。時代ごとのコミュニケーションも平行して描かれる。が、こんなにマジメに説明する物語ではなく、男子高校生の欲望とかアホさとか妄想などが炸裂に炸裂する。支部大会から舞台や会場の広さが変わり、後半の動線にも変化が。上演前日、真剣な顔で動線を確認する姿を見て、「アレをやる場所を考えているのか」と思うと笑ってしまった。文章ではあのアホさは伝わりきれないので、何かの機会に再演して多くの人に観てもらえたらと願うばかりです。
・大麻『蘖』
「調べ学習」で特養ホームの高齢者に話を聞くことになった高校生3人。彼らに自分の過去を話す高齢女性の今の姿と若かりしころの出来事、それを知った高校生たちの心境が描かれる。高齢女性のセツ(1年生だったのね!!!)を含め、演技は格別に上手いです。だからこそ、支部大会ではちょっとした引っかかりに振り回された私ですが、短期間でさまざまな修正が行われたのもあって、素直に観ることができました。後から、この作品ってラジオドラマにもできそう、って思いました。NHKのディレクターが全道大会にいらっしゃっていたようなので、札幌局制作でやりませんかね?
さて。支部大会で審査員をやっておきながら「審査員目線」って難しいなと思いました。率直に書くと、全道大会は「舞台作品として面白い」が賞に直結するわけではなかった(富良野の作品を批判するわけではありません。存分に笑い、楽しみました)。私は教員でも芸術を誰かに教える立場でもないので、これまで様々な舞台を観てきた経験や知識を通じて判断することしかできません。高校生が演じているからということは何の関係もなく、「もっと多くの人に観てもらいたい作品」「面白い作品」を選んできました。全道の審査員は、自ら高校生や大学生らを指導する立場にある方々。それを加味し、かつ、「ハチワンダイバー」並みに潜り込むと、今回の結果に「ああそうか」と納得できるのですが。
ここ数年、いろんなお誘いをいただいて高校演劇の世界にちょっとだけ足を突っ込んでいますが、私の周囲の人たちを含め、高校演劇を観たことがない人が抱いている「高校演劇」の印象は、何一つ変わっていないと感じています(特段、「高校演劇」とくくるのも野暮ですが、あえて)。だからこそ、何かできると思うんですけどね(私が、ではなくてね)。
そうそう。今大会の感想ツイートを拝見する中で、架実Kajitsuさんという方の感想がすごくいいなと思いました。
https://twitter.com/engeki_sukisugi
●11月15~17日、コーチャンフォー釧路文化ホール
text by マサコさん