とある一室で凄い作品のオーディションが行われる。オーディションを受けるために集まってきた5人。途中からどこからともなく現れたひとり。そして謎の声。
前半30分は、ひとりひとりが部屋に入り、やがて初めて出会う相手とのやりとりが続く。そして謎の声(オーディションする側)の指示を受けて、6人は『このオーディションは何なの?』という思いを持ちつつもインプロ(即興劇)をやらされる羽目になる。『このお芝居は何なの?』と思いつつ観ていると(笑)、後半になって、その場所がどこなのか明かされ、観客としてはドキッとさせられる。
話としては、前半が状況を何も知らない中での登場人物の言葉のやりとりを聴き、後半は観客が「種明かし」をされて『この話はどうなるのか』と結末を知りたくなるという、ふたつの異なる種類が連続する筋書きであった。
作者の大作氏によれば、「密室型SFシチューエーションコメディ」と命名したらしい。
出演は、梅原たくと、大作開、菊池颯平、城田笑美、ふじむらたかし、宮田桃伽。声の出演で納谷真大、上總真奈。いずれもELEVEN NINESではおなじみの顔ぶれで、その点ではキャラクターが分かりやすくて面白かった。もちろん、インプロで、謎の声にそれぞれのキャラクターを振り分けるように指示されたことによって、ますます分かりやすさが際だったことはいうまでもない。
オーディション部屋の中に色分けされた椅子だけという舞台装置が効果的に使われていた。後半で、なぜ色分けされているのか明らかにされる点においてもうまい使い方だ。しかし後半で、登場人物がひとつの色の椅子を巡って「これは赤でしょ」「いや、これは青」というように、人それぞれに見える色が違っていて驚く場面があったが、これがどういう意味なのかが分からなかった。地球が白と黒の世界しかなくなった、そこで色分けできる人材が欲しいと考えたならば、登場人物は赤は赤、青は青と識別できなければならないはず。このまま地球に連れ帰っても混乱するばかりではないのか。(笑)
役者さんは全員、滑舌もよく声も良く通っていたが、ややうるささを感じたのは小生だけだろうか。マイクを通して声を拾っていたとすれば、もう少しマイクの音量を下げても十分聞き取れると思われた。全員、声がいいのだから。
演技もオーバーアクションが際立ち、しかも呼吸もピッタリで、6人全員のやりとりでも、ふたりだけ、三人だけのやりとりでも、スピード感もあって面白く感じた。とくに梅原さんと大作さんのやりとりは押して引いてという心の動きが分かり、うまいなあと感じた。そういえば、宮田さん、3月の「はじまりは、おわりで、はじまり」で、個人的事情で役を降りるといっていたのでお芝居も休止すると思っていたが、「はじまりは、」だけの役を降りることだったようだ。好きな役者さんなので、このお芝居で姿を見ることができて良かった。でも、途中からオーバーアクションの部分がタコの動きに見えてしまった(褒めてます)。
ただ、全体で70分のお芝居としては、前半30分がやや冗長だったように感じた。一人一人が密室に入っていって驚くさまを「丁寧に」表現しているのだが、丁寧すぎて長いプロローグを見せられているように感じた。この部分をもう少し切り詰めて、後半を膨らませた方がもっと楽しめたと思う。とくに、宮田さんが友だちと携帯電話で会話していて「地球が大変なことになっている」という場面が最初にある。「それよりこっちが大変だ」といって電話を切る。このことが後半の種明かしにつながるのだが、地球が白と黒の世界しかなくなったという理由の説明だけでは物足りなさが残る。そのことが友だちにどのような厄災をもたらしているかも知りたかった。
とはいえ、やっぱり好きなELEVEN NINESのお芝居。タイトルと内容がまったく一致していないことも、ELEVEN NINESなら許されるような気がするから不思議だ。
ELEVEN NINES『六人寄れば修羅シュシュシュ』(原案・ドラマトゥルク:納谷真大 作:大作開 演出:ELEVEN NINES)
2019年11月23日(土)18時
上演時間:70分
サンピアザ劇場にて
text by 熊喰人(ゲスト投稿)