そうか、そうだったのか!の連続 札幌山の手高演劇部『み・ん・な・の・お・し・ば・い』

通し稽古を含めると、本作は今回で4度目(たしか)の観劇になる。パトスでの上演は、本作のベストだと思っている。

とある女子高の演劇部顧問になってしまったイチロー先生を中心に、彼を厳しく指導する虹子先生や心配の種でありイチロー先生の同志にもなる生徒たちの物語を、昭和、平成、令和と時代とともに描く。笑いありホロッとさせる場面あり、何よりも演じている高校生が楽しそうな作品だ。

本作は、今年の高校演劇石狩支部大会でも上演された。今回は、単独の、高校演劇部初のTGR参加(しかも新人賞エントリー!)。上演する場が支部大会の札幌市教育文化会館小ホールから「ことにパトス」に変わり、場転やセットに変更が必要となった。10月の石狩支部大会、サンピアザ劇場公演、11月の中禰先生の全道大会審査員…と師走並みの忙しさが山の手演劇部を襲ったのを見ていたが、そんな心配はなんのその。中禰先生と、どーんと構えている(ように、私には見える)矢萩先生の温かな見守りもあり、生徒たちはきっちり成し遂げた。

劇場が小さくなったことで良かったのは、一人ひとりの表情の、細かな変化を見ることができたこと。この場面でこういう表情をしていたのか、心境の変化を細かに表現していたのかと、教文小ホールの通路からは見えなかったことが見えた。教文小ホールでの上演では、広い舞台を難なく使いこなす手際の良さにも感心したが、本作の深さを知るには、大きなホールよりも観客との距離が近い劇場の方がぴったりなのかもしれない。

物語はイチロー先生を中心に進み、彼を取り巻く登場人物にも見どころが多々ある。教文小ホールで観た時はそこを「ざっくり」と捉えていた(私の視力のなさも理由)。けれど、近くで表情を見ることができたことで、スケバン明菜が演劇にのめり込んでいく様子や、ほのかが部員とイチロー先生との間で戸惑う様など、一人ひとりの心の動きや深さを見て取れた。何げなくそこにいた人物ですら、かなりの存在感を醸していた。それらがあって、本当の「みんなのおしばい」なんだなぁと実感した。3年生が卒業する前に、もう一度、本作の上演があれば嬉しい。

ご縁があって高校演劇に関わっているけれど、今回も山の手の「成長力」を実感した。山の手の演劇部の生徒は、役者として舞台に立つときの「顔」や振る舞いをしっかり身に付け、毎年、前年とは違う姿を見せてくれる。短いスパンで様々な修正ができたのも、これまでの公演や取り組みがあったからなんだろうな。

だから米澤さん。「3年生が卒業して…」なんて焦らなくても大丈夫だよ。

 

・11月26日、ターミナルプラザことにパトス

text by マサコさん

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