見えない部分を感じさせる RED KING CRAB『ありあけ』

脚本・演出 竹原圭一さん。

工場長亡き後(幽霊?になって出てくる)、残された人たちが工場再建に向けて奮闘する物語。

個人的には面白くなかったのだが、何か感じさせるものはあった。それはしっかりと取材を重ねて創り上げたものだからだろう。

実は、ということのほどではないが、ボクは10月14日に行われたプレステージツアーに参加している。竹原さんから今作の時代背景や登場人物の相関などを解説された。『ありあけ』は主に三人から刺激を受けて創ったという。ボクのメモ(「」内)に手を加え整理してみる。

 

山崎健作さん。

陸軍少年飛行兵に志願。元特攻要員。戦後『青空会』でボランティア活動。劇中の『大空会』のモデル。「どこに種を植えるかが大事」(たしか山崎さんの言葉だったと思う)と言われ、創成川東を舞台にした。

 

渕上宗重さん。

戦争関連の品を展示する大刀洗平和祈念館を作った。九七式戦闘機を復元。「個人から大きな波」

 

松田優哉さん。

札幌の役者。「何を大切にするのか?」「やりがい」

 

台本の「あとがき」に書いてあったのはこの方たち。

あらためてメモを読み返すとボクが感じた「何か」とは先人に対する畏敬の念なのだろうか。

実は(今度はちょっと真面目に)、このプレステージツアーは「山崎洋裁教室」で行われたのだが驚いたことがあった。入ってみると本棚が並び、「やまざき文庫」と書かれた紙が貼ってある。日本の近代史を扱った書籍が目についたが保守系の本がずらりと並ぶ。右・左でいえば「右」だ。ボクの本棚と似ているので親近感を覚える。札幌の演劇界の方は「左」が多いと感じていたのでちょっと驚いた。そこで竹原さんに質問してみた。「好みの分かりやすい本棚ですが、竹原さんは読まれたのですか?」というボクの質問に「全部ではないですが時代背景をつかむために読みました。」とのこと。「右」というより竹原さんは柔軟なタイプだな、とボクは感じた。少なくとも保守系の歴史観にシンパシーを感じていなければ山崎健作さんに取材はできないだろうから。(ネットで検索すると山崎さんに関する記事がいくつかあったので読んでみてください)

 

そんな驚きがあったのだがボクが「何か」を感じたとしか言えないのは、話自体は分かるのだけれど焦点がぼやけているよういに感じたからだろう。プレステージツアーに参加したので工場長が亡くなっているのは分かっているんだけど、亡くなった理由がなかなか分からないので疲れたし(死んでんだよね?と途中自分の記憶を疑う)、人員を減らさないなら給料カットしなきゃいけないはずだし、仕入先から材料が届かず裏から手を回した権力者に謝りに行くんだったら不条理感をもっと出してほしかったし、前工場長が大切にしていたであろう人形を簡単に捨てようとする?などなど。

台本の「あとがき」も微妙に分かりにくい文章なので(空回り感があるような?)、周囲の人に「あとがき分かりにくいかな?」と聞いてみてほしい。(興味深いことも書いてあるので多くの人に読んでもらいたい)

 

気になったのはクライマックス、主人公?の工場長の幽霊に対する呼びかけは竹原さんの松田さんに対するものだったのだろうか?内容がある意味リアルなので竹原さんに聞いてみたいと思った。

 

最後になりますが二つボタンのスーツ。竹原さんに下のボタンは外したほうがいいとプレステージツアー後に他者を通して伝えたのですが、TGR授賞式では留めていた。よほどこだわりがあるのかな?

 

 

2019年12月1日(日)11:00 扇谷記念スタジオ・シアターZOOにて観劇

text by S・T

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