大人の笑いを堪能 弦巻楽団#35『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』

ステージ上にはベッドがふたつ。マンションの寝室といった舞台美術。
そこに住んでいるのは古川大和41歳。妻とは別居中。そして居候の框貞九郎39歳、独身。寝室の中でのふたりの会話で物語は進む。エピソードとして語られるのは、古川大和の仕事先の出来事、貞九郎が大和に紹介した女性のこと、そして離婚調停のこと。
 
『二人芝居で90分は長いかな』と思っていたが、テンポの良い展開だったので、時間の長さは感じなかった。もちろん、二人の役者さん、つまり深浦佑太(古川大和役)と村上義典(框貞九郎役)という弦巻楽団ではおなじみの二人だからこそ、時間を感じさせなかったともいえる。深浦さんも村上さんもいい演技してたなあ。
 
このお芝居は、大きく分けると前半と後半とで違った様相を示していた。
前半は貞九郎が大和と同居している理由、大和が勤務するホテルで金庫を移動中に両手を挟んでしまい、しばらく両手が使えなくなったときのこと、そして貞九郎が大和に紹介した女性が貞九郎の元カノで大和が激怒すること、また、貞九郎が付き合っている女性から借金していて、その返済資金を大和に工面してもらうことなど、二人の日常が語られる。
後半は、一転して、大和のもとを離れ、別の男性と暮らし始めた妻が離婚調停に持ち込んだことによる大和の心情と、離婚調停に準備する二人の姿が描かれる。離婚届にサインしない大和。一度は裁判所に呼ばれながら行かなかった大和。その理由は大和の一途な思い。「きっぱり別れるべき」と意見する貞九郎と衝突し、一度は貞九郎を追い出すも、やっぱり呼び戻してしまうという、揺れる男心が描かれる。
 
どちらが好きかといえば前半。いくつかの出来事で展開される前半は、語られるエピソードも面白かったし、息の合った二人の会話のやりとりも面白かった。声を出して大声で笑うのではなく、じんわりとこみ上げてくるおかしさ。まさに大人の笑いだ。後半も、離婚調停の準備のため、貞九郎が調停員役となって大和に質問するくだりは、たしかに笑いを誘った。しかし大和と貞九郎が意見の不一致でけんかをし、大和が貞九郎を追い出した後に、ベッドに伏して大声で泣いてしまう演出はどうなのだろう。いや、もっと前、大和が貞九郎を追い出す場面が本当に必要だったのだろうか。もちろん、大和が貞九郎の存在をどれほど大事に思っているかを表現する方法として「泣く」という演出は理解できる。この場面が大団円につながるので、ドラマチックに展開するためには仕方なかったとも思う。結局貞九郎が戻ってきて、ベッドに横たわり、二人で天窓から星を見るという、静かな終わり方をするためにも二人の「大げんか」は必要だったのかもしれない。
しかし、二人の日常を、会話を通して描き、離婚調停という非日常を描くだけでも十分に楽しめる内容であったと思うのだが…。
 
とはいえ、大人の笑いを十分に堪能できるお芝居であったことは間違いない。脚本の面白さとそれを十分に生かすことができる役者さんのお芝居を、新年最初に観劇できたのはラッキーであった。
 
 
弦巻楽団#35『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』(脚本・演出:弦巻啓太) 
2020年1月20日(月)19時30分
上演時間:90分
サンピアザ劇場にて

text by 熊喰人(ゲスト投稿)

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