緊急事態宣言下、2019年「記憶に残った作品」を辿りながら

演劇のみならず舞台関係者にはコロナショックで苦しい環境です。筆者の朗読師匠、松井信子先生のご息女、女優の小林さやかさんも、東京の小劇団座長として公演決行か否かの苦しい決断を迫られて眠れぬ夜を過ごしていらっしゃるとのことでした。(さやかさんは、テレビの「サザエさん」でたえこおばさんの声優もしています。)

思えば今年度は、観劇側の筆者にとっても、うっそ〜というくらいショックな上演キャンセル、渡航中止がありました。昨年10月には台風のため、海老蔵さんの「オイエディプス」がなんと私が観る予定だった10月12日のみ休演、東京行きをやめたので、その後移動して静岡芸劇で観劇予定だった宮城監督の北村想「寿歌」も観れず。この2作品は大いに「記憶に残る」候補だったのですが、あえなく沈没。また、ロンドンで観る予定だったベケット作品「エンドゲーム」はじめ数作品が、コロナで渡航中止したため、これらも沈没。不運です。泣いても喚いても窓を割っても、逃したチャンスはもう戻りません。5月のモーリス・ベジャール・バレエ団の来日も無理でしょう。まったく、このような芸術不在状況は、生命に関わらなくとも、魂の栄養失調になります。こちらも緊急事態です。

ロンドンの劇場も6月いっぱいは公演中止が決定でしょう。今、各劇場及びロンドンのチケット販売ウェブでは、劇場作品の映像を無料配信したり、デジタルサイトを紹介したりしています。ウェブ編集者らの署名入りで真摯な舞台芸術への愛あふれるメッセージと共にメールがきます。そんな中、グローブシアターは、チケット代も返金なしという方針で、寄付を募るメールだけが来るので、ちょっと嫌いになりました。ナショナルシアターやオールドヴィックらは、当時まだイギリスでの感染がどえりゃあことになる前で劇場も営業していましたが、「コロナのため渡英を泣く泣く諦めます、」という私のチケットキャンセルのメールに、丁寧に「貴女のご配慮に感謝とリスペクト」と返金または次回使える金券を手続きしてくれました。無料デジタル映像配信には、ナショナルシアターやBBCもあれば、Digital TheatreやMarqee TVの一部など既存の配信サイトもあり、世界の演劇、バレエ、オペラをスマホでも観ることができます。字幕があるものもあります。アメリカのBroadway作品もあります。今、舞台芸術への関心を繋ぎ止めるには、超一流作品群の映像配信なのでしょう。お試しあれ。

さて、とはいえ記憶に残る作品はございます。札幌で観た作品を含め3作品挙げます。これは後ほど語り場編集者が、読みやすく全投稿者のものをまとめてくれます。乞うご期待。

北海道は比較的感染者数が落ち着いてきて、札幌ではえんかん作品も上演されて何よりですが、演じる皆さんも公衆衛生に気を遣い大変だとお察しします。私は行けませんでしたが。

緊急事態宣言下、心は晴れませんが、私の舞台芸術への愛と舞台関係者の皆様への敬意は不変です。と、なんだか宣言したくなったのです、感染していないのに息苦しくて。今、浮かぶのは、メイ・サートン氏の詩にある言葉です。

夢見つつ、深く植えよ

コロナ終息の暁には、想像x創造の花が舞台に咲き誇らんことを。

スーパームーンに祈ろう。

2020年4月7日

text by やすみん

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