寺山の句集を身体化する 風蝕異人街ダンス部Showcase「花粉航海」

JR琴似の栄町通りの琴似教会の裏のレッドベリースタジオの前庭で、風蝕ダンス部の「花粉航海」の公演と柴田詠子さんの独舞を観てきた。

出演はヨシダミホさん、cannaさん、千葉洋平さん。

風通しのいい野外公演は疫病禍の今日、ひじょうにいい環境だ。

スピーカーから波の音が聞こえて、公演が始まる。

寺山修司の若き日の句集、「花粉航海」をどう視覚化するのか興味津々である。千葉洋平さんが黒一点なので、青年テラヤマのイメージを引き受けているように見える。

寺山の句集は多分に空想の混じった具体的な幻影世界である。

一句、一句を身体表現で再現する意図は感じられず、「花粉航海」の世界の全体的なイメージを柴田詠子さんの振り付けで表わしているように見えた。

千葉洋平さんが寺山の思春期の葛藤、憧れ、夢、苦悩を身体で表現しているのに対し、ヨシダミホさんと、cannaさんは、全体の句集の持つ心象風景を具体化しているように見えた。

それは、航海を思わせる波の動きであったり、風の気配であったり、恋人や母の影であったり、手のひらとの対話であったりする。

終盤、赤い鉢巻きで目隠しをして、着物を羽織って洋平さんが再登場した。それは目隠し鬼であったり、青森性であったり、いろいろな意味に受け取れるように感じた。

「花粉航海」の後、白い衣装をまとった柴田詠子さんの独舞が演じられた。今度は詩の断片のような科白を交えた舞いだった。「遠い記憶」「感触」「雪の結晶」…と言ったことばを柴田さんがどう具体化して身体で表現しているのかがダイレクトに伝わって、最前列だったのでどきどきした。

小規模だが、芸術性の高い公演を間近で体験できた。

司町寺町山町修町嘘を縫う町あらずやひばりよ

2020年9月19日午後3時
観劇場所 JR琴似 レッドベリースタジオ

text by 山口拓夢(ゲスト投稿)

text by ゲスト投稿

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