熱意に勝るものなし さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座『大黒屋光太夫ロシア漂流記』

2016年の「神昌丸遭難の段」、2017年の「アムチトカ島の段」を観ている。特に2016年の時は、あしり座オリジナルの新作というふれこみもあり、代表の矢吹先輩も、本を書いた信乃太夫さんも、三味線の弥栄さんも、出演するあしり座のみなさんも、みんな闘志を燃やすというか、「やってやるぞ」という気合いというか、そんな熱さがあったと思う。何よりもこの物語を人形浄瑠璃でやる「粋」というのを感じた。そして2021年の今回は、「全五段を一気にみせる」という試みだ。

江戸時代後期、船で伊勢から江戸に向かおうとした大黒屋光太夫らは、その途中で嵐に遭い、アムチトカ島に漂流してしまう。仲間を失いながらも、日本へ帰りたいという思いを持つ光太夫らはロシアをさまよい、約10年を経て帰国を果たす…というのがだいたいの内容。

観劇当日の午前中からいろいろとあって、私は2段目の後半から観始めた。私は、あしり座含め、やまびこ座・こぐま座の人形劇は、本当に手が込んでいることを知っている。一作品完成にいたるまでの、みなさんの稽古や苦労も知っている。だから、五段を一気に披露することもすごいことだが、「五段を完成させた」熱意に勝るものはないなぁと思った。また、休憩時間に配役表を見て、かつて話を聞いた「人形劇をつくる高校生」たちが今、OBとして参加していたことにも嬉しくなった。

さて、全五段一気披露は13時30分~17時(休憩時間含む)という長丁場だ。観ている方より上演する方が断然大変だと思うが、観劇日前に矢吹先輩に上演時間を聞いた時、思わず「長いーーーーー」と返信してしまった。今となれば、2日公演であれば「一段、二段+α」「三段、四段、五段」と分けるのもアリだったかなと思う。また、コロナ下で終演後にロビーに出てくることができない代わりに、出演した人形たちが(何か台とかに立てて)ロビーに現れていたら嬉しかったかな(今回、二階席で、〝世界の〟沢さんの人形を間近で見られなかったので)。

黒川さんの切り絵はとても美しかったです。

 

2021年2月28日 札幌市教育文化会館で観劇

text by マサコさん

SNSでもご購読できます。