観劇レポート「オーウェルの思いと脚色について」への補足。
原作は設定が分かりにくいし、異常な日常(例えばテレスクリーン用の表情が必要。動揺したり、不用意な瞬き一つで思想警察に逮捕される)が描かれるとともに、登場人物がその日常によって精神的に壊された感じがするので感情移入もしにくいと思う。その世界観なりを舞台で表現するのは難しいだろうと思っていました(案の定ちょっと寝た)。
けれど観て良かったと思いました。拷問により恋人を裏切った後で「同じ感情は抱けない」のセリフがより「壊れた」感じで発せられ、ストンとボクの中に入ってきました。「やつらは内面までは手出しできない」との認識がいかに甘いものであったかが、原作で読み取ることができなかったレベルまで感じ取れました。
ちなみに原作にある『付録 ニュースピークの諸原理』では、2050年ごろにニュースピークがオールドスピークに取って代わることが「予測されていた」とあり、過去形だから党は崩壊したんじゃないのか? との希望的観測をする解釈もあります。
しかし今作の設定は2067年、小佐部さんはそんな希望をも打ち砕き、観客をより絶望させたかったのでしょうか?
それからカタリナスタジオさんに問い合わせたところ、「カタリナ」はスタジオ建設に大きく関与した方の洗礼名とのことで、やはりドーキンスは「演出」ととらえた方が自然だと思いました。
2021年3月14日(日)15:00 カタリナスタジオにて観劇
text by S・T