曖昧になる境界線 シアターコクーン『プレイタイム』

2020年、人口2500人程度の小さな町に住んでいたわたしにとって、コロナ禍での「オンライン演劇」は喜ばしい試みだった。
でも、難しさを感じたのはオンラインでの演劇は、ドラマや映画のような映像作品とは似て非なるものであるというところ。
舞台で上演される演劇を、ただ生配信するだけでいいのか。
はたまた、ZOOOMのように演者も「ステイホーム」しながら展開していくのか。
そんな中、見てよかったと感じた作品が「プレイタイム」だった。

舞台のはじまりと終わり、舞台裏・舞台・オケピ・客席、時間も空間もすべての境界線が曖昧で、裏方スタッフの働きも丸見え。映像作品のような、演劇作品のような、そのどちらでもあるようなないような、このコロナ禍で数々生まれている新たな表現のひとつなのだなと感じた。
俳優陣が魅力的なのはもちろん、空間の使い方やカメラワークがひたすらに新鮮で、実験的だった。
お話は男女の話で、どちらも面倒くさく、一辺倒にはいかない、複雑な、でも、そういうものなんだろう、というきれいに一般化されたものだったような気がする。
音楽も結構よくて、エンディングの曲が特によかった。

この作品くらい、見終わったときに、いいもの見たな、とか、この気持ちはなんだろうとか、今どこにいるんだろうとか、心が浮遊する感じ、こういうものにお金を払いたい、と家にいながらにして思えたのが嬉しかった。
 
 
2020年7月 シアターコクーンライブ配信 主催/Bunkamura

text by 中脇まりや

SNSでもご購読できます。