どこまでも交わり合えない 座・れら『おやすみ、母さん』

久しぶりの観劇でした。

画面上で観劇することはあったものの、リアルでの劇場は久しく、懐かしいような心地もして、やや緊張。

 

『おやすみ、母さん』は、前情報はあまり入れずに観た。

ただ、フライヤーを見るだけで視界がかすむありさまだったので、劇中、正気でいられるかかなり不安があった。

母親がいなくなる話だろうと思っていたら、逆で、死にたい娘とそれを止めたい母親の話でした。

感情的な劇というよりも、「れら」らしい(とわたしが思う)着実で丁寧な人間ドラマを見させてくれる劇だと思った。

正気ではいられない「娘」の振る舞いが腑に落ちる。

 

「こんな娘に育ってごめん。でも、母さんのせいなんかじゃないから自分を責めないで。」

「そう思わせてしまうように育ててしまってごめん。母さんが悪かった。だから自分を責めないで。」

互いが傷つかないように、思い合っているのに、ふたりの気持ちは平行線から抜け出せないまま、交わることはない。

お腹の中で育て、この世に生まれ、何もできなかった小さな自分の赤ちゃんが、あらゆることを自分でできるようになって、結婚をして、出産をして、離婚をして、実家へでもどって、死にたがっている。

そんな娘を見つめる母親の空しさ。

そして、「死なないで」って言って欲しいし、「死なないで」って言わないで欲しい娘の、最後の甘えのようなものを感じた。

どうしたって、どこまでも平行線なふたりを見つめているのは、胸が苦しくなるのでした。

 

この悲しい脚本が、他の劇団さんや俳優さんではどのように上演されるのか、興味がわいた。

 

2021.11.12(金)19:30

シアターZOOにて観劇

text by 中脇まりや

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