札幌国際短編映画祭を観よう!

今年もコロナの影響で、ほぼオンライン上映のみとなったSapporo Short Fest。インドア派、引きこもりたい派の当方にはかえって112作品が2800円で見放題はありがたい。国際コンペの作品から北海道セレクション、アニメからドキュメントまで盛りだくさん。詳細は、映画祭ホームページをご覧いただくとして(https://sapporoshortfest.jp) 特に心に残った作品について感想をネタバレしないよう書きたい。

そもそも短編は短い!ほとんどが20分ほどの長さ。30分あると長いめだと感じる。言いたいことを短く伝えるのは難しい。長台詞を書いたシェークスピア氏も「Brevity is the soul of wit」(簡潔さは機知の真髄)とおっしゃる。俳句が、ある瞬間を凝縮して表現するように、短さにはズキュンとハートを射抜く明確さとじんわり余韻を残す洗練された技が見られる。

インターナショナルプログラムを10本ほど見た時点で、心に残った作品群から、世界が大きく傷ついていることを実感した。分断と孤独。応募作品は世界105ヵ国から2960本だったそうだから、きっと多くのフィルムメーカーが取り上げたのだろうし、知らず知らずに影響されて作品に反映されたかも知れない。コロナ禍、増幅された分断と孤独。人間の内面を掘り下げた作品が多い。しかしそれだけでは終らない。懸命に抗う人間の姿がある。優しさとユーモアを忘れない理性がある。

短編映画作品の醍醐味は、日本では知られていない俳優、どこで演技を教えたのかと興味をひくような名子役たちに会えることである。知らない顔ほど新鮮で説得力がある。
秀作揃いの中、めったに見られないであろう作品をあげるならば、イランのホセイニ監督作品、「国境の凧」の子役が素晴らしい。というか演技していないみたいだ。地雷が埋められた国境、言語の違いを背景に、主役の男の子から国境の向こうの女の子に送る「空が好き」という言葉に、この子を抱きしめたくなる。

作品ごと感想を述べるとキリがないので、個人的に、フィジカルな反応がでたものをご紹介するにとどめる。受賞作品とはちょっと異なるのもあるが楽しみ方は人それぞれだから。
北海道作品から、Soraさん監督、「ハリネズミの愛」。美しいアニメーションに見惚れていると、ハリネズミがヒュンと風に飛ばされるシーンで、思わず「あっ!」と声が出た。
牛たちが主役のマクマレン監督「リトル・ベルリン」で、エンドロールに牛たちの名前?がちゃんと挙げられていたのには、監督の温かい目線が感じられてついウフッと笑いが。
スペインのシモン監督「シニアバンド・ベンガラス」では、老いてゆく主人公に自分を重ね、最後の歌に本当に勇気づけられて、涙。歌が聞きたくて続けて3回観た。
フランス、バハン&レビル監督「プリンセス・オブ・エルサレム」のラストの展開に「え、マジ?」とつぶやいてしまった。この主役の演技にも感心。

撮影技術がすごいとかシーン作りに手が込んでいるとか、スタッフの専門的見地からの情報も面白い。先般のピザハット提供ピザを食べながらオススメ作品を語る会では、まだ観ていなかったドキュメンタリーや、観るのが怖いホラーなどの紹介もあり、まだまだ楽しめそう。皆さんにも舞台観劇の合間にぜひオススメしたい。12月5日まで。

2021年11月

やすみん

text by やすみん

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