2022年度 記憶に残った作品 ー クラアク芸術堂、弦巻楽団、札幌座Pit

九十九坊の選んだ3作品

毎年、こうして3作品を選んでいるわけですが、その年によって様々な観点で悩みます。

今回もまた同じですが、今年度の作品に関してはかなり割り切った選び方をさせていただきました。
曰(いわ)く、とりあえずまず本数に斟酌しないで、ざっと脳内に候補作品を思い浮かべる(当然ですが3作どころではありません)。その中から、「今週末にこれらが全部上演されるとして、スケジュール的に3作品しか観られないとしたらどれを観にいくか」というかなり乱暴な方法です(笑)

結構あっさり決まるものですよ。「これは今週末じゃなくてもまた再演がありそう」とか、「これはあと数年寝かせておきたいな」とか。

そんなわけで下記3作品とさせていただきます。
あ、先に次点を1作。いつぶりだろう、久々に札幌で観た商業演劇、舞台『千と千尋の神隠し』(チケットが獲れたのは上白石萌音さんの回 2022/6/9 18:00 hitaruにて観劇)を選ばせていただきます(割とミーハーだなこいつ)

【2022年度 記憶に残った作品】※順不同

■クラアク芸術堂『ダブリンの鐘つきカビ人間』 2022/9/11 16:00 コンカリーニョにて観劇
――後藤ひろひとさんの傑作戯曲。札幌の役者さんならこの人で、と誰もが思うような主演の小林エレキさん。作品の格(という言い方はあまり好きではありませんが)に負けないキャストの熱演。諸般の事情で上演延期となっていた本作ですが、期待以上の満足度でした。

■弦巻楽団『ピース・ピース』 2022/11/20 18:00 パトスにて観劇
――弦巻作品として新たなエポックメイキングとも言える作品。静かな、深く優しい余韻。思い出すたびに、自身の人生の記憶と結びつけて反芻してしまうような心持ちになるのは、まるで好きな小説を紐解いている時のよう。「小劇場演劇は、個人的な〝出逢い〟である』という僕の持論そのままの作品でした。

■札幌座Pit『受付』 2022/4/10 14:00 ZOOにて観劇
――別役作品が好きなんですよね。あの「感覚」には定期的に浸りたいのですが、演者の方々と同様、物語に飲み込まれていく中で見えてくるというか、セリフの渦に身を任せていくうちに誘(いざな)われる世界があるのですが、その域に観客を運ぶことが演者にとっていかに難しいか。今作では、普段の配役ではあまり見られない納谷さんの一面も堪能することができました。

text by 九十八坊(orb)

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