2022年度 記憶に残った作品 ー 劇団た組

マサコさんの選んだ1作品

■劇団た組『ドードーが落下する』 2022年10月22日クリエイティブスタジオ

2018年、楽曲をyahyelが担当すると知って、た組の『心臓が濡れる』を観た。その後もいくつか観ているけれど、作演出の加藤拓也は、「クズな男(クズ男)」を描くのがとても上手い。あからさまなクズ男ではなく、いい人に見えていても、会話の内容や物語の中からじんわり「クズ男」ぶりが伝わるというか、最後には「マジでないわ」と思わせるような描き方をする。とはいえ、そこにムカつきながら観るのではなく、「今回はどんなクズ男が出てくるのか」と楽しみにしてしまう。

本作で藤原季節が演じる信也も、売れない芸人の夏目や周囲の人たちに手を差し伸べて「他人を気遣ういい人」に見える。が、「結局、何の責任も取らんのかい」とツッコミたくなるような人物でもある。別れた彼女との会話からも、彼女を思いやってと思いきや、「自分(の考え)が正義」というのがじわじわと染み出てくる。という人物を、藤原季節が演じるものだから目を離さずにはいられなかった。

た組の舞台は東京まで行かないと観られないと思っていたから、昨年の札幌公演は本当にうれしかった(次もぜひ来てもらいたい)。今月は、た組の『綿子はもつれる』と、藤原季節が出演するイキウメの『人魂を届けに』を観る予定。楽しみ過ぎる。

text by マサコさん

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