作:札幌西高校演劇部 第73回 高文連石狩支部演劇発表大会 優良賞、舞台技術賞、創作脚本奨励賞 受賞
10年前、高校の友達3人で制作した短編映画をきっかけに、現在も映画の脚本家を目指し続ける女性の物語。
栄光に向かって走るあの列車に乗って行こう はだしのままで飛び出してあの列車に乗って行こう 弱い者達が夕暮れさらに弱い者をたたく その音が響きわたればブルースは加速していく 見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれよ
古くも捨てることのできないラジカセから、80年代特集ということでTHE BLUE HTEARTSの『TRAIN-TRAIN』が流れてくる。懐かしいな、と思った。メンバーに某新宗教に入信した人がいたな、あれが無ければバンドの活動はまた違ったものになっただろうか?その教祖は今年亡くなったな・・・などと余計なことを考える。
今作で取り上げられたのはバックトゥザフューチャーにタイタニック。振り切った演技はスーパーサイヤ人?そして平原綾香のJupiterも使われた。それらを見るたびボクの中で当時の記憶が呼び戻される。
バックトゥザフューチャーは「ギター好きのあいつが喜んでいたな」とか、タイタニックでは「人生観を変えるような映画」と文学サークルのあいつが語っていたと思い出す。Jupiterになると「職場で話題にしたな」と(このように今作は刺激されるものが多くあり、途中思い出にふけって作品の理解、記憶が曖昧なところがありますがご容赦を)。
ここまでくると見えない銃で撃たれているのは、見えない弾丸を撃ち込まれているのは親御さんの世代だな、と思った。夢を追いかける同世代に向けてのエールでもあるが、進路を気にかけ口うるさくなってしまう親に対する問いかけでもあるのだろう。あなた方にも追いかけた夢があったでしょう?と。的外れかもしれませんが、もしそうだったとしたら「勇気あるな」と思いました。素敵な作品でしたので、きっと今作を観劇した親御さんの方々は2008年の北島康介のように「なんも言えねぇ~」と思ったはずです(ちょっと意味は違うけど)。
3人は熱意の差、受験勉強、家庭環境の違いなどから次作を作れず疎遠になってしまうのですが、10年前の作品(擬人化したラジカセが彼女たちを見守る)のように、投稿したラジオレターから再び繋がることができたのは見事でした(この解釈であっているかな?)。
個人的には彼女たち3人以外の男子のキャラクターが良かったと思います。他校の年下で映像制作に非凡な才能を持つ彼でしたが受験勉強をきっかけに映画に対する情熱を失ってしまう。「覚悟がなかったんです」とハムレットの「覚悟がすべてだ!」から学んだかのようなセリフ。演劇部員が発すると重みがあるなと思いました。タイトルの「片道切符」に重みがかかる場面でもありました。現在の主人公に対するアドバイス、「ハッピーエンドじゃなくても希望のある終わり方がいい」も今作の終わり方と重なり、観劇後に振り返るとより胸に響いて心に残るセリフとなりました。
今回の大会では都合により札幌西さんしか観劇できませんでした。高校演劇には興味がありますが、今まで立命館慶祥さんと北星女子さんしか観たことがありませんでした。2校とも面白い作品を作るなと思っていましたが今年はどちらも全道大会に進めず・・・。高校演劇は層が厚いのですね。来年は何校観劇できるかなぁ。
2023年10月2日(月)19:00
えぽあホールにて観劇
text by S・T