2025年のNHK大河ドラマは、江戸時代の版元、蔦屋重三郎が主人公らしい。当時の写真はないけれど、実際の蔦重は横浜流星みたいな顔面なのだろうか、と疑問に思う(なお、映画「HOKUSAI」では阿部寛が演じていた)。本作は、2020年に上演した「寛政DIE-HARD」の後の話でもあるが、「寛政~」を観ていなくても楽しめる。一方で、高校演劇の規定時間60分に物語を詰め込んだ印象も残った。
蔦重の死後、落ち目になっている喜多川歌麿は、「お上」のターゲットになっている。版元にも軽くあしらわれ、作品を世に出すこともままならない。そんな歌麿の元に、歌麿が最初に描いた女〝おきた〟、「弟子にしてほしい」という男、「預かってほしい」と頼まれた14歳女子が集まる。ワケありの歌麿と意外と上手くやっている中、江戸の版元の間ではいろいろなことが渦巻き初めていて…という物語。
舞台上の色使いや、主要人物の衣装やメイクの工夫もあって、次はどんな展開になるのかとワクワクしながら観た。歌麿と版元の和泉屋の2人から町人が大勢出てくる展開、舞台に飾られた色布をくぐる場転など、見た目でも緩急が感じられて観客を飽きさせない。テンポ良く物語を進めていくのは昨年の「イチゴスプーン」と同じ。お上がうるさい江戸時代の出版事情も、説明っぽくならずに見せていく。あらゆるところで、北斗の〝粋〟を感じた。
今回、石狩支部でも帯広の全道大会でも観ることができなかったので、全道での上演をパソコンで観た。もし、会場で観ていたとしたら、細かい設定まで把握できただろうか。14歳女子が北斎の娘、と聞いたところで机上にあったノートに相関図を書き始め、「この人がこうなった」とか「お上がここでこうした」などと書き込んでいたら、伏線の整理はできた。けれど、台本も手元にない中で、同じことを会場でできるかどうか。また、和泉屋はねっとりした口調やたたずまいが魅力的なのに、終盤、感情をあらわにする場面でがなり続けてしまった。もっと彼の狡猾さを感じられる怒り方があったのではないか。もう一つ。見どころが結構あるためか、タイトルにもある「PURPLE」はそれほど効いていなかったかも。とはいえ、「この作品で何を伝えたいか」とか、その手法を強く問うのは、ちょっと野暮かなとも思う。
人間関係がバチバチしまくる中、出戻りの「おきた」の演技や表情がさわやかだった(そのさわやかさが、ラストに余韻を残す)。これは個人の好みだけど、清涼感ある色味の衣装だったら、さらに彼女のさわやかさが際立ったと思う。
【上演】第73回全道高校演劇発表大会 2023.11.17 帯広市民文化ホール
【視聴(観劇)】2023.12.9、須知先生から送ってもらった上演データをパソコンで視聴(須知先生、ありがとうございました)
text by マサコさん