TGR2023回顧録(番外編)――劇団fireworks『≒生活。』

アーカイブ第3夜をと思いましたが、TGR2023での上演が中止になったファイヤーワークスさんの作品を拝見することができましたので今回は「番外編」として。
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TGRでの公演中止(延期)は大変残念だっただけに、仕切り直しての公演を楽しみにしていました。
生演奏は同カンパニーの魅力。登場人物たちの生活が断片的に提示される前半。地下鉄のSEだけで風景や匂いまで感じられるのは「地元」ならではですが、本筋(?)のストーリーが動き出すまでの時間配分は個人的にはちょっと長く感じもしました。(ただしそれが後半に効いてくるのですが)。

そして地下鉄車両内での停電事故(事件?)。喧騒から一気に静寂へ。
スマホを利用した簡易ランタンで、居合わせた人々がポツリポツリと語り出す。このひと幕だけで掌編として成立するようなつくりですが、生活の外面(前半)から内面へという落差とともに、暗闇で五感が研ぎ澄まされる「焚き火効果」が登場人物だけでなく客席も取り込み、まるで同じ車両に居合わせているような舞台と客席の一体感を生みだします。
そして終幕。約束の日に地下鉄各線のそれぞれの始終発駅からテレビ塔(大通り駅)へと皆が一斉に近づいてくる高揚感。小倉さんのカウントダウン(エピソードの回収)。前半の地下鉄での雑然さとの対比は、言わずもがなですがそれぞれの心理描写とも一致していて、登場人物とともにあの車両に居合わせた(という気分にさせていただいていた)僕は終始笑顔で舞台を見つめていました。

それぞれの「生活」の好転なども、それほど多くは語らず空気感で示唆する米沢さんらしいエンディング。三島さんを謎のまま配役したり、停電事件の詳細をスルーしたりなど放置多めで観客の想像力に任せる作り方も僕好み。11月の中止は残念でしたが、春が待ち遠しいこの時期に拝見できたのは結果的にベストタイミング。ちょっと心が軽くなる素敵な作品でした。

<主観的絶対評価>
音とリズム★★★★★……SEだけで「札幌」を感じられる。ここにある生活感
のめり込み度★★★★★……停電の「焚き火効果」だけではない、いつまでも聞いていたかった会話のバランスの良さ
和泉さん☆☆☆☆☆……素でこういう人なんじゃないかと本当にあきれた(ほめてます笑)

2024/2/4(日) 18:30 シアターZOOにて観劇
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 シアターZOO提携公演
札幌演劇シーズン2023‐冬 サテライトプログラム  劇団fireworks第15回延期公演『≒生活。』
2024/2/2(金)〜4(日)

  登場するのは札幌で生活している人。
 彼らのほとんどが地下鉄を利用しながら普通の生活をしている。
生活。生きて、生体として活動すること。
 日々を賑わしている窃盗犯は捕まらないし、多発している一時停電の謎は解けないまま。
 それでも生活は続いている。
 そんなある日、たまたま乗り合わせた地下鉄が停電してしまうが――。

 言葉と音と音楽と想像力でつむぐ、札幌に住む人たちの物語。

【脚本・演出】
米沢春花(劇団fireworks)

【出演】
和泉諒/小川しおり/桐原直幸/坂下大和/塩俵昇大 (以上、劇団fireworks)
小倉佑介(ハッピーポコロンパーク)/丹野早紀/三島祐樹/横山貴之(Compagnie “Belle mémoire”)

【スタッフ】
音楽:山崎耕助(劇団fireworks)
照明:竹屋光浩(ヘリウムスリー)
音響:高橋智信(劇団fireworks)
エンタメトレーナー:河野千晶(UniqueRhythmic)

木村歩未/川原まみ/細谷もくめ

text by 九十八坊(orb)

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