久しぶりの札幌演劇シーズン、過去のヒット作品の再演集ゆえに見たことのあるタイトルも多い中、パスプアの「きをみずもりをみる」を選んだ。知らない作品であったこと、脚本・演出の小佐部氏が真摯に活動を続けていることに感じ入ったからである。短編4作品というのも気楽で嬉しい。「死」をテーマにしたという作品たちを鑑賞して、逆に「生」「若さ」を見た。プレゼンやマネタイズといった現代社会のモチーフがあったこともある。これらが登場する作品、「最後のプレゼンテーション」は面白い着想だと思う。ただ重いテーマをコント風に風刺的笑いに仕上げた分、人の一生について考えさせる余韻と深みある裏技的、伏線的ストーリーがほしい気がした。何しろこちらは高齢者で周囲に現実の死が取り巻く。ハンサムの象徴であったアラン・ドロンも亡くなってしまった。しかし全編、不快な感じは全くなく、演者の活き活きぶりに清々しさすら感じた。「幽と現のあいだ」も前半の演出が巧みで引き込まれた。
小佐部氏はまだ35歳くらい(うろ覚えですみません)とアフタートークで判明。初めて彼の作品を見たのは10年くらい前だから、まだあの頃は大学を出て間もなかったのだなあと、おばちゃんっぽく時の流れにセンチメンタルな気分に浸る。ダンスも取り入れるなど演劇への取り組みが真摯で、大変好感がもてる。俳優さんはいずれも安定感があり、ベテラン感あり。日曜の午後、若き札幌演劇人の奮闘に清涼感を得る一服だった。今後のパスプアがどう年輪を重ねるのか楽しみだが、真摯で正直な取り組みと若々しさは失わないでほしい。
2024年8月4日午後3時より シアターZOOにて観劇
やすみん
text by やすみん