これは「音楽劇」と控えめに銘打っているが立派なミュージカル。楽曲と歌唱が素晴らしい。近年は歌もなりわいとしている竹森さんはもちろん、阿部さんも、セリフ(表現)として歌が生きていた。
ミュージカルについては、個人的にはどんなに歌が巧みでもやはり感情表現(もしくはセリフと言ってもいい)として成立していないと意味がないと考えているので、その意味でも本作は立派なミュージカルだった。そしてお二人の、史実を「お笑い」によって伝えられるという強み。過剰にエモーショナルを押し付けない(もちろんそれなりに演出されているが)仕立て方も好感。
重箱の隅をつつくような話で恐縮ですが、個人的には、一般公演としては残念ながら最初の(女性アナウンサーさんによる)「朗読と作品の紹介」は蛇足と感じた。朗読自体は素敵だったのですが、そのパートで物語が完成してしまっていたので過剰構成かと。そのあとの、いきなり二人のお笑いから始まるツカミの良さを損なう結果になってしまっていたように見えた。
(これは全くの余談ですが、これが、二人がお笑いコンビだというところもフィクションで、普通の演劇カンパニーがそういう設定でこの戯曲全体を作り上げたとしたら更に凄いんだけどなあと妄想したり)
生活支援型文化施設コンカリーニョにて観劇
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アップダウン二人芝居 音楽劇「桜の下で君と」
2023/11/10(金)〜12(日)
text by 九十八坊(orb)