TGR2023回顧録(5)――星くずロンリネス『くずテレビ』

およそ5年ぶりとなる単独公演はOP動画から渾身。ラストのタイトルロゴ処理(ノイズ効果)まで丁寧でさすがだなあと感服。
配置した複数のモニタも効果的。幕間の映像パート、寿司狼企画の編集のテンポの良さやグッズ販促に引っ掛けたお笑いなど、舞台準備も兼ねているのだろうがコンテンツとしての質も高い。映像商品を作り慣れている龍成さんの面目躍如役者陣の集結が豪華すぎて、あらためて龍成さんの人脈の広さと「星くずロンリネス」という看板の力を感じた。(「今日は特別ゲストが来ています!」と言われた瞬間に誰かわかった笑)

【①緑の神】りえ蔵さんとなるみさんで始まる1本目のツカミは万全。アキトさんギャグ監修による今昔コラボのギャグ場面は前のめりに楽しめる高揚感。夫婦の出会いとなった準決勝での、野澤さんの演じたピュアさがあってこそ妻の心情の変化にも納得する。野澤さんの好演が光る。

【②ワイルドシングな恋】恋人の「プロレスってさあ…」のセリフがなんというか元プロレス者としては自虐的に心地よい(笑)。楽太郎さんのビクビク上司の小ネタがツボで、「強制じゃない飲み会」とか一言目から笑えすぎ。最後は地元で結婚かと思ったけど、多様性社会らしいラストなのかな。

【③長い一日】巧みな演者ばかりの練りに練った濃いコメディ。大谷さんの大仰な刑事の上を行くきゃめさんのキャラクターづくりはすごいが、そこに上乗せしてくる山木さん、という作りの完璧さ。山木さんの一言目から大爆笑たが、それもきゃめさんと山木さんの技量があってこそと思う。

【④白衣の女王】星来さんの女医とか、野村さんとかピンポイントでなんてベストなキャストなんだろうと。
「長い一日」も言葉遊び要素のあるお笑いだが、本作こそ龍成さんが長年こだわっている言葉遊びの極地なんだろう(しかも3つのシーンをシェイクしてしまうとは)。セリフのタイミングを合わせるだけでも至難の技なのに、立位置(物理)の複雑さや、眼の前にいない相手に向けたセリフで眼の前にいる役者と会話を繋ぐという演者に課せられたオーダーの多さたるや。。。今更の気づきでお恥ずかしいが、これは本来編集で繋いで完成させる類(たぐい)の映像作品の脚本を生の舞台で現出させるというかなり至高の企みなのだと。
もちろん映像で作ったほうがいくらか楽なはずなのだが、それをあえて舞台でやるのは客席の「笑い」を取り込んでこそ完成、ということか。映像作家だからこそ作れる、いや作りたいと思ってしまう作品なのかとあらためての感慨。

演者の皆さん全員それぞれに拍手を贈りたいが、個人的に「効いてるなあ」と思ったのは野澤さんと山木さん。

演劇小劇場BLOCHにて観劇
――
星くずロンリネス 短編演劇オムニバス公演『くずテレビ』
2023/11/16(木)〜19(日)

text by 九十八坊(orb)

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