なるほどこれは弦巻さんが言うように生半可では上演できない作品だ。しかし結果として、弦巻さんが札幌座Pitで再演を重ねた磯貝さんの『ブレーメンの自由』のように、今後も期待する作品になった。
1幕の佐久間さん・木村さんから凄いのだが、井上さんが登場して国内情勢を語るシーンでこの作品のレベル感の高みを井上さんが規定してしまった。正直、僕は井上さんが「井上さん芝居」をすると思っていたのだがそこにいたのは役者ですらなく、語る言葉は欠片も虚構(台詞)には聞こえなかった。
そして、木村歩未さんがベストアクト。今まで彼女を色々な作品で拝見してきたが、新たな感情表現や台詞回し等というだけでなく、今まで見たことのある類の表現さえも今までとは全然違った。
(所属のfireworksさんでは演劇シーズンでの『沙羅双樹の花の色』も控えているが、今後どんな演技を見せて頂けるのか楽しみになった)
まだ2日目なので、楽までに更に進化するのかもしれないが、公演中に何度も再観したい作品と、演技としてではなく一度きりの「体験」として心に刻みたい作品があるとすれば、本作は僕にとっては後者だった。それほどの満足感。
もちろんこのオリジナルキャストでの再演を今から楽しみにしている(気が早いけど)。
2023年12月2日(土) 生活支援型文化施設コンカリーニョにて観劇
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弦巻楽団 #38 1/2『死と乙女』 (弦巻楽団 秋の第文化祭!)
2023/12/2(土)〜3(日)
text by 九十八坊(orb)