旗揚げ公演なのでここがスタート地点だと思うのだが、『零と徒花』が第0回公演的な位置づけにあるとは思うので振り返ると、作は前作より格段に良かった。“谷口健太郎イズム”とでも言うべきものがしっかりと伝わってきた。
今回も新撰組モノということで、殺陣と物語の折り合いをどうつけるのかに興味があった。
物語的には前回の『零と徒花』の方が起伏もあった。勧善懲悪でもなく怪異が起きるわけでもない、誰も死なない今作だが、和太鼓の演奏も含めて構成がよく、立川さんの役も効果的で、「単なる殺陣芝居」ではなかった。
演者全員のキャラが立っていた。「零と徒花」で主役だった高田さんは脇に回ってなお沖田総司として映えていたし殺陣もレベルUP。石川さんは前回より格段に近藤勇に見えた。以前「殺陣は技術以前に肚の座り具合」と書いたが、皆さんがどれだけ鍛錬してきたのかが目に見えるよう。
(笑いのシーンはある意味一番難しいよね。間(ま)の問題かな)
劇中で語られる「正義とは」の納得感、坂本龍馬のセリフが一番だったのは、やはりそこに込められた演者の説得力だろうか。刀を抜かないのにこいつは手強いと感じる桂小五郎(常本さん)。ともすれば似たような役を振られることの多い恒本さんだが、こんな恒本さんをもっと見たくなった。
そのガタイから悪役が振られることも多かった安藤さんだが、序盤からの軽妙さが妙に気になっていたらまさかの展開。なんと「殺陣のカタルシス」を一番感じたのは敵方である竜馬(安藤さん)の1対5バトル。クライマックスの全員の殺陣も見応えがあった。
殺陣の上手さが先行していたが今回演技に磨きがかかっている人、演技から入って今回殺陣も上達していた人、殺陣をする以前に強そうに見える人、など、「殺陣芝居」についてあらためて色々と考えさせられました。そして主役の朱麗さん。名のある隊士でも強くもなく、それでいてクライマックスで強大な周囲に気迫負けしない熱演。札幌で“谷口イズム”を若い人たちが繋いで行ってくれることに頼もしさを感じます。
カンパニー&関係者の皆さん、改めまして旗揚げおめでとうございます。
旗揚げまでは色々大変だったことと思いますが、続けていくことはもっと大変ですよね。でも、今回の反響は大きいと思います。今後の活躍を楽しみにしています。
札幌市こどもの劇場 やまびこ座 にて観劇
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劇団GlanzPark 旗揚げ公演『桔梗、竜胆、繚乱ス〜新撰組異聞〜』
2023/11/25(水)〜26(木)
text by 九十八坊(orb)