序盤でドラマ「ブラッシュアップライフ」に言及するシーンがあり、なるほどこれはバカリズムさんでも考えるかと思われるようなメタ的なヒューマンコメディだなと。「ありがち」と捉える向きもあるだろうが実際に見たことあるかと問われると無いんだよね。
そのコンセプトで一気に観客を引き込む見事さ。客席からは笑いと展開への興味が尽きないが、僕はタイトルに絡めた短歌から「どちらが虚構でどちらが現実なのか」といった「胡蝶の夢」的な目眩というか自分の足元の不確かさも感じてしまった。
とにかく脚本が超絶緻密、そしてウェルメイド(その辺は弦巻作品にも通じる)。演者さんは巧者揃いなのだが、例えばこれを高校生が演じたとしても、演出以前に脚本自体が緻密に完結しているのでかなりの公演が期待できると感じた。(あとから知ったのだが高校生への脚本提供も多いとのこと)
そして、終盤で語られる内容から、僕は「役者に対する“舞台で演ずるとは何か?”“役者とは”」と言った問いかけをも含んでいるのでは、と言った穿(うが)った見方までしていたのだが、客出しで作演の春陽さんとお話させて頂いたところ見当違いではなかったようでほっとしました笑
もちろんストーリー的な面白さだけを愉しんでもOKだし、演劇人として何かを受け取る場合もあるだろうし。――お芝居とは「個人的な出会い」だと思っているので、年齢や経験や立場によって観客は作品から何を感じてもいいわけで、その意味では幅広い興味深さのある作品だった。
TGRって脚本賞ってなかったっけ?劇団5454さんにはまたぜひ札幌に来てほしいなあ。
(※本作はTGR2023にて大賞を受賞)
2023年12月2日(土) 生活支援型文化施設コンカリーニョにて観劇
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劇団5454(ランドリー)『宿りして』 (弦巻楽団 秋の第文化祭!)
2023/12/1(金)〜2(土)
text by 九十八坊(orb)