座・れらさんの舞台はいつもそうだが、今回はいつもに増して舞台美術が素敵。フクダトモコさんが娘役としてとてもフィット。重たいテーマの公演が多い座・れらさんだが、今作では心地よい声の響きで伊沢かの子を体現してしまう竹江さんがすこぶる軽やかで心地いい。(小沼さんは出番が少なくちょっと残念)
奇しくもこの公演初日に、先頃(11/29)脚本の山田太一さんが逝去されたことが公表された。
山田太一脚本には大好きな作品が数多くある。会場パンフに演出の戸塚さんが「山田太一の人間ドラマは人と人との間(あわい)より生まれてくる」と書かれていたが、僕も本当にそう思う。そしてまた、演者のたったひとつのセリフからも「何か」が立ちのぼってくるのが山田太一脚本なのだと思う。
本作からも、そういった作品自体の持つ「香り」がそこここから感じられたが、まだ2回のステージがあるのでその中で更に熟成されていく、本作を演じることはそれほどに難しい試みなのだと思う。若い女性客四人組が到着してからの終幕の良さにくらべ、伊沢かの子の不審なふるまいで引っ張る山田太一作品独特の序盤展開のテンポにはまだ熟成の余地を感じた。
2023年12月2日(土) 札幌市こどもの劇場 やまびこ座 にて観劇
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座・れら第19回公演 山田太一作『林の中のナポリ』
2023/12/1(金)〜3(日)
text by 九十八坊(orb)