TGR2023回顧録(15)――札幌座Pit『カフカ経由 シスカ行き Bound for Sisca via Kafka』

<初日感想>
事前妄想では不条理劇みたいな感じかなと思っていたんです。そこに沢さんの人形たちがどう絡んでくるのかと。かなり予想はハズしました。

沢さんの演技はたぶん初めて拝見したのだが、例によっていつものように軽妙洒脱な歩さんに対して長年の相方のようなフィット感。
例によって歩さんはつかみどころがなく(笑)どこまでホンに書いてあったのか。俳優同士のパフォーマンスというか、エチュードのように時間は進んでいく。
合間に飛び込んでくる人形劇は、進むにつれ比重が人形劇に移っていく。廻り舞台、照明、舞台装置を駆使した操演と演出で、客席から見える画(え)はさながらヨーロッパのショートフィルムアニメーションのよう。
最後は沢さんが歩さんを「操演」するというラスト。舞台上で起きている事象以上に、僕の脳内には視覚刺激以上のイマジネーションが広がっていく。
「ショートフィルムのよう」とは書いたが、この想像と創造の拡がりはまさに「舞台芸術」でしかあり得ないものだった。
個人的観劇史の中でも十指に入る体験。ダブルアンコール。現時点では個人的には今年のTGR大賞はこの作品一択と思ったが、大賞にエントリーしてないのね、なんてこったい。

<楽日感想>
初日は舞台を俯瞰できる後方の席だったが今日は最前列。初日のようなショートフィルム感はこの位置では感じなかったが、舞台に入り込んだ感覚で「羽」が広がるのを見上げた。操演中心のお二人も含め初日より更にチーム感が増していた。
沢さんと歩さんクラスの方でも勿論ステージを重ねることで更に熟(こな)れてるんだろうけど、初日にしても舞台上で生じた「誤差」は歩さんがその場でひょいと埋めてしまうので、素人の目には二人のやり取りが大きく変わっては見えなかった(いや細かい差異はあるんだけどね)。

ただただ素敵すぎたけど、これが歩さんの総括ではないよね。
いつかまた観たいのは再観というよりこの続き。
そうだな、続きというか、旅から帰ってきた沢さんが歩さんとまた出くわすところからかな。

2023年12月1日・6日 扇谷記念スタジオ‐シアターZOOにて観劇
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札幌座Pit『カフカ経由 シスカ行き Bound for Sisca via Kafka』
2023/12/1(金)~6(水)

text by 九十八坊(orb)

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