むしろずっと観ていられる 劇団アトリエ『学生ダイアリー』

いつまでも、ずっと続くような……。でも必ず、終わりがくるような……。

思えば学生時代は、そんな感じだった。高校時代と社会人時代の真ん中にぽっかり空いたエアポケット的な、そこだけ時間の流れが異様に遅い世界にまぎれこんだような。膨大に消費していったあの時間はいったいなんだったんだろうと思うけど、思い返したところでけっして帰ってはこない過ぎ去った日々。

劇団アトリエ『学生ダイアリー』は、そんな時間をシアターZOOに突如よみがえらせる。舞台はとある大学の休憩スペース。白壁の汚れが生々しく、本当に大学から切りとって持ってきたみたいだ。ゴミ箱、トイレの入り口、誰に見られるでもない掲示物……。そこで、8人の男女が入れかわり立ちかわり、出たり入ったり、話したり話さなかったりを繰り返す。

休憩スペースというのは大学時代の比喩のようなものだ。高校時代と社会人時代のエアポケット。束の間の休憩。ただしいつまでもそこにとどまってはいられない。彼らはここで、いつ終わるともしれない漫然とした時間を過ごしていく。

舞台は、高すぎも低すぎもしない一定のテンションをたもったまま1時間半以上続いていく。こう書くとまるで退屈な芝居のように思われるかもしれないが、全然そうじゃない。むしろずっと観ていられる。これはすごいことだ。作劇のたしかさと演出の腕、役者陣の力量とスタッフワークが、うまく噛み合った成果だろう。

特に、計算された作劇と演出。実はこの舞台、開演前からすでに物語は始まっている。なので10分前くらいには劇場に入った方がいいだろう。さらに、明確な開演を提示しないまま始まっていくという挑戦。若い、鋭敏な才能を感じた。

いつまでもずっと続くような、でも必ず終わりがくるような学生時代。この舞台もまた、ずっと続くようだけど、終わりがくる。そうして観終わったとき、すべてが周到に計算されていたことに僕たちはようやく気がつく。会話のすみに、散りばめられていたもの。

もしかしたらこの舞台は、個人や世界にも、同じことを言っているのかもしれない。

いつまでも、ずっと続くような。でも……。

 

公演場所:シアターZOO

公演期間:2016年7月30日~8月6日

初出:演劇シーズン2016夏「ゲキカン!」

text by 島崎町

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