コンカリーニョで開催の二人芝居特集、ペアプレイパレードに登場する演目のひとつ、ギィ・フォワシイ「動機」。このフランス人戯曲家の作品に興味があったので、こしばきこう氏にお願いしてゲネプロを拝見した。残念ながら本番のパレードは、他用のため観劇できないからだ。ご快諾いただいて感謝している。誠実に感想を述べたい。
ギィ・フォワシイは、ブラックコメディとして有名になった作家だが、洒落ている。フランス人に対するおしゃれコンプレックスなのだろうが、この感じは日本人には書けない。そこを、寺山修司アングラ派の風蝕異人街が演じるから、おどろおどろ怪しい、古臭い雰囲気でいいんだなあ。演出によっては、ストレートに分かり易すぎて少しつまらなく感じるかも知れない。ともあれ、オリジナル作品多数の中、このフランス古典はかえって目新しくありがたい。
さても化けたり、堀きよ美さん!女優でござる。哀れ、若い労働階級の人妻、スーパー店員を演じる。これは、頑張って!と見守るしかない。恐怖、戸惑い、怒り、と行き来する女の感情を表現しながら、リアルな貧しい庶民の女の生活が浮かび上がる。さて、相対する高圧的ブルジョワ女性は、三木美智代さん。この彼女の動機がテーマである。狂気、倦怠、憎悪にまみれた女性でありながら、誰しも、「なんかわかる」のではないか。結婚生活、配偶者への失望、怒り、退屈な生活をリセットしたい気持ち。一瞬とはいえそんな気持ちになったことがあるあなたは、この劇の結末にスカッとして、笑顔で実生活に向き合おう。若く健全で退屈を知らないあなたは、え〜うっそ〜ひどい!と唖然としていよう。酸いも甘いも噛み分けた熟年諸君、おめでとう。ふふっと鼻で笑って、狂気に陥らなかった我が身の幸せを感謝し、労働階級vsブルジョワという社会問題や不条理を考えよう。このドラマの動機は、時代、国境を超えて普遍的な人間の側面であり、それゆえ簡潔にして根深い。
三木さんと堀さんは、声のトーンが似ており、明瞭な低音で聴きやすい声なのだが、落ち着いた声だけに、全体的に同じ音色になりメリハリが薄くなる。声の高低をダイナミックにしたい。「動機」の解明はセリフがすべてなのだから、観客は集中してセリフを聞く。その引き込み方はうまい。観劇後、セリフの「間」を修正したとの情報があった。緊迫感ある短編だけに、セリフが観客の頭に入りやすくする工夫はありがたい。
ペアプレイパレードでは、私のお気に入り、おぐりまさこさんも登場する。観たかった。
2017年7月12日21:45 コンカリーニョにてゲネプロを観劇
text by やすみん