普遍的な話―マームとジプシー『あっこのはなし』

あっこと同い年、アラサーの自分にとって色々と既視感を覚える話でした。別に女子3人で共同生活をしたことも、街コンに参加したことも、ロウリュウを経験したことも無いけど。でも。年下とのちょっとしたジェネレーションギャップをネタにしたり、本人よりも友達の方が熱心に恋人の有無を心配したり、くだらない話で大笑いもするけど、その中にほんの少し将来への不安が滲んでいたり…といった光景は、自分の日常でも度々見かけることなので。

 

このままでいいのかな。このままこの場所で、ものすごく苦しいことも無い代わりに、ものすごく幸せなこともないだろう人生をただ過ごしていくだけでいいのかな。でも今それなりに楽しいし、とりあえずいいかな。という少しの焦燥感と諦めと、わずかな後ろめたさを感じながら日々をやり過ごす人たちって、いつの時代でも必ず一定数はいると思うので。30代女子(敢えて“女子”と言わせてください)からすると、どこの地方都市でも起こりうる普遍的な話のように見えました。

 

同じ場面が繰り返されるリフレインという手法はそんな、停滞しているようにみえて少しずつ変化していく日々を表現するのにぴったりで。突然なにかが劇的に変わるわけじゃないけど、繰り返されるたびに以前とは少し違う状況になっている。情報量が増えていたり、視点が違ったり。些細な事ですが、それが重なることで点が繋がって線になっていくようなそんな印象を受けました。後日観た3本の公演よりも、私はこの『あっこのはなし』が一番よかったです。自分が30代のこの時にこの話を観ることができ、そして共感できることが、大げさに聞こえるかもですが「幸せ」だと思いました。この気持ち、他の年代の方にもわかってもらえるかなー?

8/16(水)19:00~ 教育文化会館リハーサル室A

text by うめ

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