「ほころび」が生み出す表現のカタチ ニッポンの河川『大地をつかむ両足と物語』

演出家の前説から、ゆるやかに作品の世界へ誘導され、気づけばロボットのような装備をした3人がステージへ。演者が照明と音響もこなすとはこういう事か!と合点がいったところで物語が始まる。

スポットライトは帽子のつばから自らを照らす。舞台中央から十字にのびる豆電球のサスペンションライト。小道具たちが放つ色や形を持った光。必要最小限の灯りが、空間を創り出していく。

「カチッ/サー/~~♪」カセットテープならではの、曲がかかり出すまでのノイズのま間が、はじめは緊張感を誘いながらも、やがて余韻に変わっていく。
ストーリーは過去と未来が交錯し、まるでカセットテープの早送りと巻戻しをくり返すようなシーンの展開。ラジカセでなくてはならない意味を強く感じた。さらにテープチェンジの時に投げ飛ばす、テープそれ自体が効果音も放つ。

アフタートークでは、演出に対する非常に興味深いお話を聞くことができた。
できるだけ簡素な演劇を目指す。そぎ落とした演出の中に生じる不完全さ。「ほころび」という言葉で表していたそれこそが、人間味ともいえるのではないかと。
また、歌や踊りのように、身ひとつで道端でも演じられる「即興性」の探求。その話に“表現が辿り着く先”を観たように思う。

目の前の「表出」を受け取る観客があってはじめて「表現」に変わる。
たとえ念入りに作り込んだ作品であっても、即興であっても、その瞬間の観客との間に生じたものが、「表現のカタチ」になるのだということを改めて感じた。
 
 
11月18日 18:00 コンカリーニョ

投稿者:akipanman(30代)

text by 招待企画ゲスト

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