固くなった心が溶けていく RED KING CRAB『ガタタン』

12月16日14時の回を観劇。劇場に入った瞬間にセットに目がいった。物語の舞台である銭湯のセット。最近私がZOOで観る芝居は、簡易的なセットのものが多かったので、つくりこまれたセットは久々に感じ、開演までセットの小道具などひとつひとつをまじまじ眺めた。

タイトルの『ガタタン』は、芦別名物の料理だ。以前テレビでガタタンの特集が組まれていた際に初めてこの料理を知った。このタイトルからも、炭鉱まちのお話なのだろうなぁとイメージしながら劇場に向かった。

物語は、炭鉱操業当時ではなく、閉山後の炭鉱まちに生きる現代の人々の話だ。
観劇をして、脚本・演出の竹原さんがいかにこの作品を創ることに対して誠実に真摯に取り組んできたのかを感じた。

現代は人と人とのコミュニケーションが希薄になってきているとよく聞く。そんな中、人々が集まる場所というのは人にとってもまちにとっても貴重な場所なのではないだろうか。自然と人々が銭湯に集まり、お風呂に入りその日の様々な思いを洗い流しながら皆と他愛もない会話をする。一見何気ない行為に思えるが、実はそれは生きていく上で大変尊いものだと思う。それぞれが色々な思いを抱えているが、周りの人々と作用しあうことにより良い方向に進んでいける。

この作品に出てくる登場人物たちは皆どこか不器用であった。それぞれがそれぞれを思うあまり不器用なのだと思う。そんな彼らが、クロさんを通して少し変わっていく様がすてきだった。

アキとハルとユキが三人でごはんを食べるシーンは特にぐっときた。食事をするということは生きるということだ。母が亡くなった後わだかまりができてしまった家族が、かつて母が作っていた料理を三人で食べることでそのわだかまりが少しほぐれていく。何があっても家族は家族で、お互いを思い合っているのだと感じた。それを後ろから見守る皆の姿も、とても印象的だった。

また、ずっとプロポーズできずにいたアオちゃんがユキにプロポーズをしたシーンは自然と顔がほころんだ。まるで自分も物語の中の仲間の一人かのように嬉しかった。

以前RED KING CRABの別の作品を観劇した時も思ったが、登場人物の名前と衣装の色が同じなのは、視覚的にも分かりやすいし、それぞれのキャラクターを理解しやすくてとても良いなと思う。

この作品を観終わった後は、あったかい気持ちでいっぱいになり、固くなっていた心が溶けていくような気がした。余韻が残る良い作品であった。

12月16日(土)14時 シアターZOO

投稿者:おかゆ(20代)

text by 招待企画ゲスト

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