役者の身体性というものには、とても興味があるのですが、ダンサーのそれは普段よりも想像力が喚起されて、とても新鮮でした。櫻井ヒロと河野千晶であればなおさらです。今回は、スイスからサックスのChristoph ErbとビオラのFrantz Loriot、飛び入りでトランペットの横山祐太を迎えて、文字通り一夜の即興パフォーマンス。出産まもない河野の存在感が出色。刺青スパッツって言うんでしょうか、シンプルな照明の色彩と陰影に合わせてクネクネ動く様はさながら蛇のようです。衣装効果がかなりエッジでした。櫻井ヒロは、直感的に河野の身体にコンタクトしながら、観客の想像力を動へ、静へと掻き立てます。今回は演劇で言えば河野が「押し芝居」で櫻井というキャンバスを染める絵の具。演奏者に目線を取られた間に、櫻井が河野のシャツドレスのローブを抜き取って足首に枷をして引っ張るシーン(シーンと呼ぶのかわかりませんが)。主客が現れたと思ったのですが、そこはインプロヴィゼーションの面白さ。思わぬ方向へ流れて行きました。芝居だと、無意識のうちにイマジナリーラインをとろうとするものですが、こういうダンスはいいですね。その場に現れる、芝居同様に再現性のない身体という行為の面白さに身を委ねれば良いのですから。JAZZというよりも、即興性の高い現代音楽のような音の粒立ちも面白く、最後は客席に美しい背中を向けた櫻井と河野の間を撃つように横山のミュートしたリードがかすかに鳴り、スンと溶暗しました。スイスからのプレーヤー2人は日本ツアーで札幌を含め12都市を回ったそうです。こういう、なかなかに触れることの少ないパフォーマンスが成立する町に札幌が入っていて良かったです。ダンサーの身体って発光するんですね。スタジオは満席でした。
5/4(木・祝) ソワレ1回のみ CONTE-SAPPORO Dance Center
text by しのぴー