文化の交差点的な企画ーアリスインプロジェクト札幌『ダンスライン』

アリスインプロジェクト札幌はどういったものなのか、いまいち説明不足だ。「アリスインプロジェクト」自体は東京で発足しアイドルや若手女優を集めガールズ演劇をプロデュースしている団体だ。ではガールズ演劇とは何かと言えば、それは私の認識で言えば「男が一切出ず女性だけが出る演劇」のことを指しているのだと思う。

アリスインプロジェクトは現在では東京以外でも名古屋、大阪、そして札幌と各地で行われている。いわゆるフランチャイズ化がされており、同じ仕組みとアリスインプロジェクト本体から提供される台本を用いて、各地域に縁のあるキャスト・演出家で公演が行われている。

札幌は1年に1回公演が行われ今年で3年目。毎回ELEVEN NINESが制作を行い、納谷真大が演出を行っている。もともとがアイドル文化から派生した演劇という印象が強いが、それと演技重視な納谷演出が融合してるのが札幌版の特徴だろう。同じように各地域ごとに違った特徴があるだろうから同じ台本で見比べたら楽しそうだ。

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アリスインプロジェクト札幌の公演は全て見ているが、1回目は(簡単に言うと)ゾンビ物、2回目は(簡単に言うと)ファンタジー物で、今回はどんな塩梅かと思ったらかなりストレートな学園青春物だった。3作連続で脚本を担当している麻草郁氏らしいファンタジー感はありつつも等身大の登場人物達が活躍する。

難関を前に諦めるもの、立ち向かうもの、そして壁を乗り越えなければたどり着けない目指す先へ向かって悩みながらも突き進む物語は、やはり同世代である中・高校生に見てもらいたい舞台だと感じた。それは物語の内容もさることながら、様々なジャンルで活躍し続ける努力をしているキャスト陣存在自体が、何かを目指す人にとって勇気を与えてくれる存在なのではないかと思ったからだ。

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演出面で言うと過去2回ではアイドル文化に不慣れな人間にはやや違和感を感じる部分もあった。それはキャストの可愛らしさを際立たせる演出だったかもしれないが、物語からはみ出た現実を見せられているように感じる事が多かったのだ。しかし今回はそれも極力抑えられ、より演劇側に寄っていたように思う。
ただ、それは同時にアイドル文化に育った人々にとっては演劇的表現が強すぎて逆に違和感を感じたり、物足りなさもあったのではないだろうか。そのあたりのバランスは双方の文化ともに出身地ではない自分には判断しかねるが、少なくとも自分にとっては過去最高に安心して見られた。

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廃部の危機を脱するべく(もろもろの事情があり)演劇部とダンス部が合同でラインダンスを練習し世界大会にでるという話のため、ラインダンスが物語の肝となる。過去2回の公演ではパフォーマンスとしてのダンスだったのだが(それはそれで今回もある)今回はそこも物語の一部として組み込まれているため、より演劇的である札幌版との相性はとてもよかった印象だ。

振り付けを担当したのはダンススタジオマインドの工藤香織さん。ダンスの専門家であり劇団千年王國の公演『狼王ロボ』でブランカを演じた方だ。彼女によって振り付けられたダンスは大変見応えがあるのだが、20人以上のキャストが一同に介してのダンスなので、見るところにとても迷ってしまった。
演技を見るという意味では前のほうの席が良いのだが、ダンスを堪能するという意味では客席後方で全体が見たくなる。生の舞台作品は見る場所によって楽しみ方が変わる良い例だと感じた。ただ、今回前のほうの席で見たのだが、多少ダンスに乱れがあったように見えた。気にするほどのものではないのかもしれないが、肝であるだけに個人的には少々残念にだった。

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出演キャストについては演技未経験のアイドルもいれば舞台俳優として活躍している人もいる。演技力の差は致し方ないかもしれないが、今回はそこまで気にならず見ることができた。1人1人の感想を書くと長くなりすぎるので割愛するが、ここで書くべきキャストとしては舞台俳優をメイン活動をしつつ3回連続で出演している岩杉夏さんと塚本奈緒美さんだろうか。彼女たちが物語のキーとなる部分を担うことで作品のクオリティを担保していると言っても良いだろう。札幌演劇を楽しむ人は彼女たちを見に行くのもいいかもしれない。

キャスト全体を見渡すと札幌で活躍している人もいれば、北海道出身で現在東京で活躍している人もいる。メジャーアイドルもいればローカルアイドルもいるし、フリーで活動する演劇俳優やタレント事務所所属で活動する人もいる。ある種北海道の「様々なジャンルにおいて表舞台に立ち活躍する」人々が一同に介している。

どうしても様々なジャンルを横断的にチェックするのは難しい。この企画はそんな普段チェックできないところで活動している人も公演を通して知ることができる。ここで気に入ったキャストの普段の活動を追うことで他ジャンルも楽しむのも良いかもしれない。ある種文化の交差点へと成長しはじめたこの企画。今後どのようになっていくか成長が楽しみだ。

 

2018年4月27日(金)19:00コンカリーニョにて観劇

 

※この公演のスタッフ欄においてELEVEN NINESが制作に入っている関係上、私の名前も入っています。しかし公演内容やキャスティングには一切関与しておらず、稽古さえ1度も見ていない状態でしたので今回書いてみました。とはいえ「関係者」感が拭えないようでしたら、この投稿は「観劇人の語り場」の趣旨には合わないかと思いますので、掲載判断は運営チームに委ねさせていただきます。

公演日:

text by kazita

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