私は普段、滅多に演劇鑑賞をすることがないので、全くの素人の感想であることをまずお断りしておく。
6人の男女が座っている。夫婦は、子供が出来たかもしれないという「予想」に慄き、
女性は仕事を続けたいから産みたくないといい、男はできれば産んでほしいという。
女は約束が違うと怒り、ヒートアップし、口論が続く。
並行して走る物語のもう一つでは、男が二人登場する。
兄弟のようだ。兄は40歳を過ぎてもコンビニのバイト店員で実家暮らし、
弟は実家を出て、普通に職に就き、結婚もしているが子供はいない。
二人が集まったわけは、すい臓がんで余命幾ばくもない彼らの母親の入院。
兄は母のために延命措置が必要だと言い、母親が早く帰ってくることを願うが、
弟は母親の気持ちになって考えること、延命措置の可否は本人の気持ち次第であるべきだと諭す。
二人の会話もまたヒートアップし、やがて兄は、弟に対して子供を作って三人でこの家に住むように言う。
しかし弟の妻は子宮筋腫を理由に、子供はいらないと言う。
そのように多分に、こじ付け臭いが、こちらも「子供」に焦点が移される。
さらに同時進行で、二人の女性がいる。婆と孫のようにも見える。
婆がその娘に、縫物を教えながら桜の話をする。
娘は桜も見たことがないようだ。奇妙な娘。
夫婦と、兄弟、それぞれで話が白熱し、やがて混じり、
ドタバタした挙句、最後になって、
女性二人の居場所はこの世ではなく、娘は、その夫婦の胎児、婆は、兄弟の母親であることがわかる。
フリーターの問題、働く女性と出産、子育ての問題、老いた親の介護の問題、
どれもが身近で思いつまされる問題なので、我々の世代は感情移入しやすい、
が、しかしどれが焦点なんだろう?どこに焦点を合わせてこのドタバタ劇を見たらいいのだろうか、
と思っているうちに、話は進んで行ってしまう。
テンポが速いのは良いとしても、もう少しせかされずに演劇を楽しみたかった。
最後には、夫婦の夫役が、「予想」に慄いて、あれこれ詮索して考えるのは止そう、
目の前にあるものを一つずつ、解決して生きて行こうという結論に達する。
ここまで話が白熱して、結論はこれなのか、というちょっとした失望感を感じた。
テーマは、現実に横たわる、いまそこにある問題たちだ。
あれもこれもではなく、もう少しテーマを絞って、丁寧なストーリー展開を望みたかった。
6/23(土) 18時 シアターZOO
投稿者:小川直久(50代)
text by 招待企画ゲスト