BLOCH PRESENTS 「野村大ひとり芝居傑作選」をBLOCHにて。
Lonely Actor Project に野村大さんの名前があると、間違いなく自分も楽しめるものがあると安心出来る。ひとり芝居においての自分にとっての安心マークのような存在が野村さんで、その作品の傑作選ということで楽しみにしていた公演。
舞台セットは明らかに斜めに見えるように構成されており、なにか置いてあるだけで妙な不安定感を醸し出すという不思議な感じの空間。幕間の映像と絡む動きがあったりするのも楽しい。ひとり芝居はもちろん面白いし、誰にでも勧められる公演でした。
「Baby,I Love You.」
未来から来た男が自分が産まれる前の両親に会って……というお話。タイムトラベルものだと、未来から来た人の言動が過去にどのように影響を与えるかというのも楽しみのひとつだけど、無理なくやっているあたりはさすが。空いている場所にピースがカチッとハマっていくさまが気持ちいい。
「西園寺」
録音済のセリフに合わせて芝居をやるという、とちった場合のリカバリが相当難しい作品。知らずに観ていると野村さんのセリフや動きに合わせて録音が流されているように見えるんだから見事。字幕ネタも面白かった。しかし、画期的な融雪剤ならば、使いどころさえ間違えなければ冬季の除排雪費用が削減されて札幌市の財政が良くなりそうな気もしますが……。
「きみのミカタ」
熊谷さん出演のゲスト回。野村さんの時と違い、影絵を使って「相棒」や同級生を表現していた。影絵を動かす動きを含めて笑いにしてしまうというのは、お笑い系の舞台で培ったセンスなのかも。文化系っぽい雰囲気もよかった。
「四十四年後の証明」
未来からかけているという電話とのやり取り。電話で話される内容に対するリアクションで話が進んでいくのだけど、話の運び方が上手いし、野村さんのリアクションも面白い。未来を知った本人が、どんな生き方をするのかも少し想像。一度観てから原作を読んだけど、キーワード的な会話はできるだけ残し、主人公の時間軸で間をおいてかけられてくる電話をうまくまとめていたんですね。主人公も、原作よりかなりいい人になっていたような気がします。
「しましまおじさんはよこしまである」
ヒーローもの。といっても、主役はヒーローではなく、ヒーローに憧れる(笑)無名の怪人なんだけど。ヒーローから出てくるセリフが名セリフばかりで、笑いながらじんと来る。やっぱり頑張るお父さんの姿は感動的ですね。
「おまえのドコンジョー」
熊谷さんゲスト回の話の登場人物が再登場。少年マンガ的な展開の笑いと涙とど根性の話。ラストに向けた展開も気持ちいい。このまま、本人が常に脇役の白鳥さんサーガとか出来ないかな。いや、気が付いてないだけで実はもうあるのかもしれない。
「あのコのためなら」
野村大さんのゲスト(?)回。電話でのやり取りだけなんだけど相手の性格がよく分かる。一緒に酒を呑んだら楽しそうな人だなと思う。主人公の機転の利かせ方とかも上手く、三人揃った所を見てみたいななどと考えてしまいました。
「コンピューター・オブ・ア・チャーム」
チャットというか、パソコン通信でのやり取りのような話。前半のやり取りが、後半、特に最後の最後に生きてくる。前半笑えて後半泣ける作品。溢れ出る思いを伝えきれないもどかしさ。涙にも見えるラストの一文字。
「sweet sweet smile」
伊藤さん出演のゲスト回。これは野村さん用に書かれたギャグだなと言うのが残っていたけど、ラストの暗転からの切替とかは、伊藤さんならではの情感が出ていたんじゃないだろうか。終末を迎える中での悲しみの中のよろこび。
「アンクル・メジャー・コード」
三田村さん出演のゲスト回。帽子と和服でついつい月亭可朝さんを連想してしまう。話も落語風にまとめていて、三田村さんの喋りの達者さもあり聴きごたえもあった。ふと思ったんだけど、これ大阪弁でやったらどんなだろ。雰囲気がかなり変わってしまうのかな。
少し不思議な話、あたたかい話が多い野村さんのひとり芝居は、誰でも安心して観ていられる。それだけに、にこにこ笑いながらいつの間にか懐に入り込んできて、気がついたらグサリとやるというようなタイプの話があったら、すごい効果的だろうなとも思う。拒否反応を示す人もいるかもしれないし、その効果が大きいのは最初の1回だけかもしれないけど、いい人に見えるが実は怖い人の恐ろしさは、善良さが大きいほど効果的なので、一度見てみたい気がします。
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2019/08/04 17:00, 08/05 19:30, 08/07 19:30, 08/08 19:30
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BLOCH
text by 小針幸弘