≡マサコさんの部屋 2020年、年始め企画≡   「ツアー公演先の宣伝ってどうするの?」 part4

 福岡には、演劇を含む地域の舞台芸術文化を支援するNPO法人が存在する。以前、仕事で話を聞いた時に「こんなNPOが札幌にあれば、ツアー公演はもとより、公演のノウハウや作品の質もあがるのになぁ」と考えた。劇団の内側からではなく、外から支援する立場から「ツアー公演先での宣伝」はどんなものなのか、的確なアドバイスをいただいた。

(マサコさん)

 

◎寄稿者/高崎大志(PINstage代表、NPO法人FPAP事務局長、九州地域演劇協議会理事・事務局長)

 

ツアー公演での広報について

活動拠点とする地域から遠く離れてのツアー公演で、どのような広報をするべきなのかというテーマですが。事前に公演先に一週間くらい滞在していろいろやれればいいのでしょうが、そういう体力はないという想定で考えます。通常の公演での動員が300〜500人くらいで、「他地域での公演に耐えるクオリティの作品を作れている」ということを前提にします(ここに至ってない場合は、ツアー公演をしても成果は少ないように思います)。また、小劇場やそれに準ずる小規模スペースでの公演ということも前提にします。

いい芝居を作るのは難しいことですが、ツアー公演をするのは簡単です。ただ、ツアー先での広報がうまくいき、お客さんがそれなりに入って、いいツアー公演にするのはなかなか難しいことです。

東京での公演を考えるのならば、「こまばアゴラ劇場」での公演を真っ先に検討するべきでしょう。アゴラ劇場は支援会員制度をもち、はじめての東京公演でも100~200人くらいの動員を見込めます。東京でも他の地域でも、小劇場系の劇団が初めて他地域公演をするとなったら、動員100人を超えるのがやっとという公演が大半だと思われるので、これは大変有利な状況です。アゴラ劇場では、国内各地の演劇シーンに目を配っており、その地域で注目を集めるような劇団であれば、応募する価値があると思います。

東京でもそれ以外の地域でも、ツアー公演をするとなると、現地での受け入れ団体の力が非常に重要です。冒頭に書いたような規模の劇団で、現地での受け入れ先の力を借りずに単独の力で広報までやるというのはほぼ無理で、動員50人を覚悟する必要があります。
よって、冒頭の規模の団体の場合に、重要なことは2点かなと思います。

1)現地の受け入れ先を見つける

2)現地の受け入れ先が動きやすい状況を作る

1)については平素からの活動やPRが重要です。いい公演をして、その地域の中で注目を集めることは必須ですが、それ以外にも色んな所に出かけていって、いろんな地域の人に会うことが重要です。受け入れ先、というわけではありませんが、公演先で仲の良い劇団を作っておけるといいと思います。 SNS などで情報を拡散してもらうとか、その地域での実際の利用のこととか、色々聞きやすい人がいることは大切です。そのため、日頃から内側に止まらずに「開いた活動」をしていく。特定の誰かに任せるとかではなくて、役者や劇団員の一人一人が他地域にもアンテナを張り、他地域での知り合いを増やしていくということができるととてもいいと思います

2)についてですが、現地の受け入れ先からの連絡について、「すぐに返す」ことは必須です。また、公演の情報やチケットの売れ行き情報などを、定期的に共有することも大切です。一番いいのは、現地での広報予算候補のための予算を、最初からしっかり取っておくことです。公的な助成金の中で、広報費を入れることができるところもあるようです。現地での制作人件費や広報予算を取れていれば、現地の受け入れ団体もしっかり動くことができます。

事前に現地に広報に行けるとして、どういうことをするべきかということですが、基本は新聞やフリーペーパーなどを回って公演のPRをすることになるでしょう。地方都市であれば新聞に掲載してもらえる可能性は高いです。あとはなるべく地元の人とたくさん会うということでしょう。これは、役者向けのワークショップをするっていうのが一番いいかと思います。そこでなるべく多くの地元の演劇関係の人に来てもらって、そこで面識をもって、「できれば公演にもできれば来てください」みたいな流れができるといいかと思います。

現地でやれる広報というのはいろいろありますが、これさえやっておけば大入り満員みたいな魔法の広報はありません。結局は地道にやっていくしかありませんが、最終的にはその集団の体力勝負になってきます。札幌は、国内でもとても地域演劇が盛んな地域です。他地域公演をした団体の数も多いです。そういった諸先輩方に、直接聞くというのが一番いい方法である気がします。

現地で演劇祭が行われている場合は、それにのっかるのも一案です。しかし、演劇祭といってもいろいろあり、集客に積極的なものもあればそうでないものもあります。その見極めは他地域からの視点ではなかなか難しいものがあります。一番いいのは、その演劇祭の経験者に聞くことです。

いいツアー公演にするのは、なかなか難しいのですが、いいツアー公演にできないとしても、ツアー公演をやることは、その団体にとっては良い経験になります。地元でほそぼそと5、6年やっていけばいいというのならば、ツアー公演は必要ありません。しかし、演劇を生活の中心において続けていくためには、ツアー公演は避けて通れない選択です。どんな劇団であっても、3年後にツアー公演をするという目標を立ててみて、では、これからどうやっていけばいいのかという劇団の戦略を考えることも、より多くの人に作品を届けるためにプラスになることだろうと思います。

ツアー公演やその広報については、ネットでいろいろな情報があります。参考までに。

・パンフレット「地域を超える制作者 小劇場から生まれる演劇公演の新しいカタチ」
http://fringe.jp/special/pmp/pmp2007.html

・福岡でのツアー公演で、良くある質問
http://www.fpap.jp/inform/forotherarea.htm

・北川大輔@カムヰヤッセン「デブがカブでご挨拶に参ります」
http://kamuyyassen.daa.jp/event/kabu.html

・ご不満があるような場合は、チケット代の一部を返金いたします。という作品の品質を保証する企画が流行れば
https://sakuteki.exblog.jp/26505865/

・そうじゃないと意味がないから、公演する現地で、RTしてもらいたい、、、どうすれば、、、
https://sakuteki.exblog.jp/27834700/

・短編の公演をやれて、翌年にフルスケールの公演とかやれたらベスト
https://sakuteki.exblog.jp/23218527/

・PINstage高崎の「さくてきネクステージ from 福岡」Vol.4
http://seisakuplus.com/news/?p=444

・PINstage高崎の「さくてきネクステージ from 福岡」Vol.5
http://seisakuplus.com/news/?p=446

●高崎大志
高校の時より演劇を始め、大学演劇部を経て福岡で劇団を旗揚げ。役者・制作・照明・舞台監督を経験。2003年NPO法人FPAPを設立、事務局長。地域演劇振興の自主事業の企画立案、指定管理者申請、セミナー等の司会等をおこない、現在に至る。地域演劇の劇評や、福岡・九州の演劇状況、国内の芸術環境格差に関するレポートなども手がける。
・FPAP HP http://www.fpap.jp/
・Pinstage HP http://ww2.tiki.ne.jp/~tttt/PINstage/index.html
・九州地域演劇協議会HP http://www.krtc.info/
・PINstage高崎大志の「さくてきブログ2」 https://sakuteki.exblog.jp/

text by マサコさん

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