【特別寄稿】札幌の演劇文化は演劇シーズンだけで広がるだろうか

寄稿者:カジタシノブ

札幌演劇シーズンが始まってから数年がたちました。劇団がそれぞれ独自に公演を打つ以外にもこういった取り組みが続いてるという状況は、色々な意味で札幌の劇団、また見に来るお客さまにとって非常に良い刺激になっている印象を受けます。札幌で活動する劇団の中には「演劇シーズンに出たい!」と思っているところも結構あるのではないでしょうか。

過去に上演され評価された作品であるというポイントも重要です。それがあるからこそ演劇に馴染みのない人にとっても、劇場へ見に行くことへの敷居が少し下がり、集客はもちろん演劇文化を広めるきっかけとしても有効です。

ただ、例えば演劇文化に「札幌の観光資源として地域経済にも貢献し、街を豊かに活気づける力」(札幌演劇シーズンサイトより)を身につけるにはまだまだ課題があると思います。

 
札幌演劇シーズンのサイトではそのような都市の例としてアシュランドで開催されているオレゴン・シェイクスピア・フェスティバルを上げています。こちらは2月からの9ヶ月間行われメインとなる3つの劇場に40万人の人が訪れるほどの活況を見せているとのこと。かたや札幌演劇シーズンは冬と夏それぞれ1ヶ月、計2ヶ月の期間5ヶ所ほどの劇場で上演が行われています。

期間はとても重要です。その土地の文化としてそれが常態化しているのか、それとも一過性なのかで取り組み方も外からの見え方も変わってくるでしょう。時計台と札幌雪まつりみたいなものです。
「札幌演劇シーズンもっと長期間やるべきだ!」というのは簡単ですが、それが容易でないことは想像がつきます。お金・劇場の確保・出演劇団の体力・広報の息切れ。「9ヶ月やるお金をあげるよ」と言われても実施できる自信が1ミリもありません。

 
何も札幌演劇シーズンに限らなくとも札幌では賑わいを見せる演劇の企画がいくつかあります。4月頃開催され若手劇団の登竜門的存在である遊戯祭、毎年8月に開催され優勝者の道外展開も行っている教文短編演劇祭、11月いっぱい開催し市内10劇場が参加して行われる札幌劇場祭(Theater Go Round 以下TGR)などなど、ざっと見ただけでも結構なボリュームです。

それぞれ企画の大小はあれど、それぞれ特色もあり企画ごとについているお客さんもいるかと思います。例えばこういった企画が横に手を取ることで「演劇」という存在の常態化、及び広報的な広がりを見せることができるのではないでしょうか?空白期間をなるべく作らず、それぞれが広報的に協力しあい、さらには内容的にも一部連動を取ると言ったようなことは企画だけを考えたらやれそうな気がします(実際の人的資源、しがらみ、お金の出処とかは知らないので目をつぶります)。

広報的な面ではd-SAPなどのサイトができたことにより横串のメディアが存在してきたといえますが、実際の企画同士が連動しての広報には至っていない印象です。札幌演劇シーズンも、次回出場が決まっている劇団の自主公演等を宣伝してもいいかもしれません。日常的な演劇公演の盛んさ、札幌には演劇シーズン以外にも様々な企画があるということが伝わることで、ひいては演劇シーズン自体への集客が増えることもあるのではないでしょうか。

 
運営面でどのような連動がありえるか考えてみると、札幌演劇シーズンは「過去に上演され評価された作品を上演」する企画なのですから、TGRや遊戯祭での最優秀作品が次年度のシーズンで上演されてもいいかもしれません。そういったやり口で言えば教文短編演劇祭優勝作品も各公演の間に挟み込んでも面白いかもしれません。と思ったらすでにTGRで大賞を取った作品は演劇シーズンへの参加権が付与されているとのお話を耳にしました。海外勢が大賞を取った時期と重なったことで実現には至っていないそうですが、実現したら面白そうですね(余談ですが演劇シーズンの「評価された作品」ってどこの誰がどう評価したものなんでしょうかね)。

ただ、こういったことをやるには、もちろん細かな調整が必要でしょうから簡単ではありません。しかし、すでにあるものを組み合わせること&発信を増やすということは比較的可能性だったりしないでしょうかね。とか言っても、それらを統括して行うところが必要でしょうから、現状の人的資源では各々の企画を回すので手一杯なので、別途部隊を新設する必要があるかもしれません。じゃあどこがお金をだすんだ。とか問題点はいっぱいありますよね。ああ難しい。

 
それぞれの企画に関わっている人間が、如何に盛り上げようと動いてもどうしても一過性になってしまいます。いくつかの企画だけでも連携を取ることで年間を通して演劇が盛んに行われて多くの人が楽しんでる雰囲気を醸し出したほうがシーンとしては盛り上がるのではないでしょうか。札幌観劇人の語り場もその一翼を担う存在になるといいなと思っています。

そうすることでより演劇への認知や集客が増え、札幌演劇シーズンだけでなく他の企画も盛り上がるし、自主公演にもお客さんが増えたりしたら劇団の運営が少し楽になりますし、そしたらより精度の高い企画を作る余力が生まれて作品の質も向上し、結果的にお客さんも喜ぶ、みたいな循環ができたらいいなと、1人夢想しています。

演劇シーンをより盛り上げる方法の1つとして主だった企画の連動話に終止しましたが、ほんとは地の利の比較(アシュランドの場合3劇場が非常に近い)や、他文化の札幌の現状との比較話もしたいところです。が、長くなりそうなのでまたの機会がありましたら。

text by kazita

SNSでもご購読できます。