アッシュランド、オレゴン・シェークスピア・フェステイバル その2
https://www.osfashland.org/en/productions/2019-plays/all-s-well-that-ends-well.aspx
演出 トレーシー・ヤング
全然「終わりよくない」この劇。いわゆるシェークスピア作品の中の問題劇の一つ。ざっくりあらすじを書く。恋い焦がれる貴族の男バートラムと結婚したいヘレン。王様の病気を治した褒美として王の命令で無理矢理結婚するに至るが、バートラムは絶対この女はイヤ、というわけで、「お前とベッドを共にすることは絶対ない!」と戦争に赴く。よほどタイプじゃなかったんですな。その際、自分が指にはめている指輪を奪い、俺の子供を宿したなら、妻と認める、とかそれはもう無理なことを手紙に書く。結果、ヘレンは、戦地でバートラムが口説いている女、ダイアナと結託して、バートラムをいわゆるベッドトリックにかける。暗闇に乗じてダイアナと見せかけてヘレンがお相手する、というもの。指輪も手に入れ、「あの時の相手は私だったのさー」というわけで、バートラムは「参りました」、となる。めでたし、めでたし?これ、おかしいでしょ?
大体、バートラムに同情して終わるのだが。
今回の演出は、うまくオーディエンスを「チーム・ヘレン」にしてしまった。主役のロイエル・ボッカスが、冴えないメガネの女子で、なんだか頑張る姿を応援したくなるのだ。これは役者の個性ありき。ロイエルは翌朝のクラスに来て話してくれたが、あまり演劇経験はまだなく、引っ込み思案で友達ができなかった学生時代、母親の勧めでバンドを始めたことなど話してくれた。自分の居場所探し、というその時の経験が、バートラムを追いかけるヘレンにも重なったという。ダイスケ・ツジ演じるバートラムは遊び人の悪い男という面が強調される。あんな男のどこがいいの、目を覚ませ!という空気になっているところで、ラスト、演出家によって加えられた無言劇で、解釈は自由だが私の見たところ、ヘレンはバートラムを卒業、別れを告げる。
こういう現代的な演出は、問題劇こそやりがいがあって面白いかも知れない。
2019年8月2日 Mountain Avenue Theatre
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text by やすみん