≡マサコさんの部屋 2020年、年始め企画≡   「ツアー公演先の宣伝ってどうするの?」 part2

 昨年11月末〜12月頭に、初の札幌凱旋公演を行った東京の劇団「メロトゲニ」。この「マサコさんの部屋」でも、役者で制作の白鳥くんに凱旋公演について寄稿してもらった。しかし私は都合で観に行けず、公演自体がどうなったのか、集客などはどうだったのか、気になっていた。そこで、せっかくなので白鳥くんに2度目の登場をお願いしたところ、前回同様、快く引き受けてくれた。チラシ、SNSなど従来の宣伝方法にこだわらない劇団の今を、ぜひ読んでほしい。

(マサコさん)

 

◎寄稿者/白鳥雄介(メロトゲニ 俳優・制作)

 

待つことも楽しめるように

僕はメロトゲニの制作担当者として劇団の宣伝に関する指揮を取っていますが、専門家ではありません。なので、僕の文章は参考にならないことが多いかもしれません。でも、どこかで何かの役に立てばいいなと思っています。ただし、いわゆる「ツアー公演」とメロトゲニの札幌公演は、僕らの「地元への凱旋公演」という点で決定的に違います。村田こけし(メロトゲニ代表)と原彩弓は札幌の劇団「おかめの三角フラスコ」として、僕も2年半前まで札幌で活動していました。何もツテのない土地へ行くのとはハードルの高さが違いますが、それを踏まえて読んでください。

11、12月の札幌公演はTGR札幌劇場祭の参加作でもありました。TGRでよく聞くのが「客の取り合い」です。TGR期間中は毎日どこかしらの劇場で公演が行われるため、演劇ファンの人でも作品を厳選するだろうし、他劇団の人たちも自分たちの公演への出費が増え、他を観に行く余裕がないかもしれません。しかし、メロトゲニの公演には、観客を含めて多くの演劇仲間が足を運んでくれました。5ステージ+1イベントで目標を大幅に上回る470人を動員しました。この成果を挙げた僕の宣伝戦略をいくつか紹介します。

 

 

1.「メロトゲニ 木曜日のお知らせ」

メロトゲニは公演の1カ月前から新規情報「木曜日のお知らせ」を毎週出しています。「お知らせ」の内容は、「役者一人ひとりのかっこいい、かわいいビジュアルを解禁」「公演にちなんだ動画企画」「役者による対談」「グッズ情報」など多彩です。劇団員全員でアイデアを持ち寄り、何を伝えるべきか何時間も会議します。さらに札幌公演では「TGR最終週にメロトゲニの公演がある!」ことを心に留めてもらえるよう、リツイートへのフォローバックを積極的に行い、ツイートする時間も考えて呟きました。また、今回に限らず宣伝の中心はTwitterですが、劇団のインスタグラムでライブ配信やストーリーズも利用しています。

2.中高生無料招待とクラウドファンディング

札幌公演に向けて、「中高生を無料招待し、新しい顧客創造につなげたい!」とクラウドファンディングを行いました。ただただリターンを売るのではなく、札幌の演劇シーンの活性化を達成していくことも考えた上でです。これは一定の成果はありましたが、公演期間と中高生たちのテスト期間と重なるなど詰めの甘さも露呈しました。また、中高の演劇部への宣伝の難しさも実感しました。今後は電話や訪問などで顧問の先生と話すことも必要かなと考えています。この無料招待は今後も続ける予定です。

3.イベントにも力を入れる

今回、「TGRで一番熱い劇団、楽しそうな劇団は東京のメロトゲニだ!」と思ってもらいたくて宣伝を行った中、力を入れたのが「闇の市」です。メロトゲニの役者たちの素顔を見てもらえる機会を作り、「次はあの人を観に行こう」と印象づけるのが目的です。稽古の様子を見せたり、役者の私物などを販売したりしました。札幌の役者、大和田舞さんや赤谷翔次郎くん、田中温子さんをゲストに迎え、盛り上がりました。

以上のようにメロトゲニが行った宣伝に特別なことはありません。強調するなら時間をたくさんかけたことでしょうか。人員も多くなく、いつになったらまともな運営ができるんだと苦しむこともありますが、劇団員全員が「宣伝」の重要性、企画性の重要性を考えています。毎週のように宣伝の「矢」を放ち、週を追うごとにメロトゲニに注目してもらえるような、観客が「公演を待つ」ことすらも楽しめることを心がけて日々戦っています。

さらにもう一つ、メロトゲニでは劇団員で美術専門スタッフでもある金子ゆりの存在が大きいです。札幌には15人の役者・スタッフを連れてきて、稽古・公演と10日間滞在しました。宣伝費は全体の予算の1割以下しか使えませんでした。それでもメロトゲニがメロトゲニらしく、チラシやグッズにこだわることができたのは劇団に美術専門スタッフがいるからです。金子のデザインは、メロトゲニの「可愛くって、棘があって、笑っちゃうけど、ちょっぴりコワい」イメージを的確に表現してくれます。

今、札幌の演劇シーンに身を投じていた頃を振り返ると、宣伝で「当たり前の行い」をできていなかったという実感があります。また、メロトゲニでは今後の劇団運営を見据えてメディアへの「プレスリリース」に力を入れつつあります。札幌の劇団ではどうなのでしょうか。Twitterなど情報の受け手が限られる方法に偏っているなとも感じています。

札幌には僕らの仲間や先輩、後輩たちがいて、みんなに支えてもらいました。今回、助けてもらった分、次は僕たちが東京で支えます。

 

メロトゲニ page.5『こぼれた街と、朝の果て。〜その偏愛と考察〜』札幌公演

2019年11月28日~12月1日、演劇専用小劇場BLOCH

 

●白鳥雄介
しらとり・ゆうすけ 1989年、札幌生まれ。高校時代、中学校の同級生と組んだお笑いコンビで、「M-1甲子園(全国高等学校お笑い選手権)」の決勝大会に2年連続で出場。その後、札幌でタレント活動を開始し、舞台出演やテレビレポーター、ラジオパーソナリティーなどを務める。2017年に上京。メロトゲニでは俳優と制作を担当。演劇ユニット「Stokes/Park(ストークスパーク)」主宰。大相撲ファン、弓道二段。
・メロトゲニHP https://mellotogeni.tumblr.com
・メロトゲニTwitter @mellotogeni
・白鳥雄介Twitter @NOLINE_Swan

●白鳥雄介、次回公演
白鳥雄介主宰ユニット「Stokes/Park」第2回本公演『フィルタリング』

・東京・下北沢OFF・OFFシアター
・1月29日(水)~2月2日(日)
・チケットはカルテットオンラインなどで予約、購入可能(https://www.quartet-online.net/ticket/stokespark2
・問い合わせ:TEL :090-5951-9639(制作)、info.stokes.park@gmail.com

text by マサコさん

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