【企画】札幌観劇人の語り場 2020年度「記憶に残った作品」

新型コロナウイルスの流行により、
舞台作品の上演・鑑賞環境が大きく変化した2020年度。
メンバー&ゲスト投稿者に1年を振り返ってもらい、
記憶に残った1〜3作品について、または鑑賞環境の変化を踏まえた「ひとこと」を語ってもらいました。

 

うめの選んだ3作品

1. 弦巻楽団×北海道大学CoSTEP コラボレーション企画 『インヴィジブル・タッチ』 2020年11月 サンピアザ劇場

世界がコロナ一色になってしまったことに、ほとほと嫌気がさしていたので、正直もうお腹いっぱいです…という気持ちで観ていた。でも、その渦中にいるからこそ見るべき佳作だったとも思う。今はもう色々麻痺してしまって、今日の感染者数を見ても何の感慨もない日々だけど、2020年の夏に感じていた先が見えない不安とか、周囲の人に対して疑心暗鬼になってしまう気持ちとかが凝縮されたこの作品を、いつか〈過去〉の事として観られる日が早く来るといいなと思う。

2. 野田秀樹×シルヴィウ・プルカレーテ 『真夏の夜の夢』 2020年11月 教育文化会館

こんな状況で何故、わざわざ劇場に行くのか?と聞かれたら、こういう演劇を観たいからだ!と声を大にして言いたい。この熱量は画面越しでは伝わらない。コロナに疲弊した心を癒してくれた、まさに夢の時間だった。舞台のキラキラしさも然る事ながら、数多いる役者の中でも秀逸だったのが鈴木杏の軽やかで可愛らしい演技。この作品が評価されての読売演劇大賞授賞も納得の役どころ。そぼろちゃんっていう名前もいいよね。

3. hitaruオペラプロジェクト プレ公演 『蝶々夫人』 2021年2月 hitaru

作品の背景等を解説してくれるプレ企画にも参加して、準備万端で臨んだ人生二度目のオペラ鑑賞。北海道でオペラを観られる幸せよ。演出が素晴らしく、客席に向かって傾斜した舞台に着飾った人々が並ぶ結婚式の場面は、まるで絵巻物の様で眼福。プレ公演?と思ったら、hitaruからオペラを創造・発信するプロジェクトが来年から本格始動するらしく、今後が楽しみになる上質な舞台だった。あれからたまに「ある晴れた日に」を口ずさんじゃうんだよなぁ。オペラ、ハマるかも。

 

S・Tの選んだ3作品

1. カムイプロジェクト『Suy unukar an ro』 2020年12月 コンカリーニョ

囲炉裏の前で、紀州の商人がアイヌの女性と会話する(言葉は通じない)場面があるのですが、商人が話し出した瞬間「あぁ、この人は家族を亡くしたんだな」と分かるんです。役者さんが悲しげな表情や声を出したわけでもないのに。言葉にならない思いを上手く表現したな、その内なる悲しみは言葉が通じなくても伝わるな、と思いました。その場面に行くまでの構成等がしっかりしていないとそうはならないので、脚本を書いた髙橋正子さんは着実に力をつけていると思いました。
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2. Belle mémoire『heavy chain』 2021年2月 BLOCH

『PROJECT WALTZ VOL.2~栄光の3人芝居フェス』で上演された。言葉の負の部分に焦点を当て「人間が創造したもので最も卑劣なものは言葉である」との考えを黒子の身体で表現した?作品。卑劣という意味が「することが正々堂々としておらず、いやらしくきたならしいこと」であるならば、自分の本心を隠し、ねっとりと相手に纏わりついて「卑劣」にピッタリの身体表現だったと思う。ボクが観たのは平野琴音さんが黒子を演じたチームでした。

3. プロト・パスプア『1984年1001月』 2021年3月 カタリナスタジオ
 
正直に言うと、この作品を観る前に2万円ほど資料集めにお金を使いました。その分考えることがありましたので、「記憶に残っている理由」として補足させていただきます。
記憶に残っている理由→感想への補足
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カジタシノブの「ひとこと」

上演側としては「公演することがリスク」という状況に。キャパシティの問題、集客のための障壁の高さ、対策経費の増加、稽古時からの感染症対策、公演時の対策・周知、公演後の経過観察。1年が経ち大分システム化されてきたとはいえ、まだまだ予断を許さない状況です。
観劇側としては、人と会う機会が減らない身では、万が一、に備え人が多く集まる場所は顔を出しづらい状況に。それは対策を怠っていると疑ってるわけではなく、可能性を極力減らさなければいけないため。結構な人数がそう言う状況にあるのではないでしょうか。

 

九十八坊(orb)の選んだ3作品

1. 二度寝で死にたいズ『山田さんちの家族計画』 2020年11月 BLOCH

このささやかなホームドラマをいつまでも観ていたい、そう思わせてくれた作品。若手ユニットの公演を拝見する機会も久しぶりでした。特に長男、そして次男のアプローチが秀逸で、自身の家族の機微を思い出しました(あれ、僕に男兄弟はいないんだったっけ 笑)。目新しさやドラマティックさがあるわけではないんですが、あて書きなのかな、丁寧な作り込みがとても心に残りました。

2. OrgofA『異邦人の庭』 2020年11月 BLOCH

TGR2020で大賞を受賞し、すでに多くの賞賛が寄せられている公演ですがあえて。一卓二椅の真骨頂とでもいえる刈馬さんの脚本、飛世さんと逸人さんの息づかい、ケレン味のない町田さん「らしい」演出。本格的な未見の小劇場作品に出会う機会が少なくなってしまったこともあり、より一層、全神経を集中して拝見しました。

3. All Sapporo Professional Actors Selection『北緯43°のリア』 22021年2月 クリエイティブスタジオ

いわゆる「大掛かりな舞台」も久々で、幕開けからワクワクして拝見しました。もっと「北緯43°」に寄せてくるのかと想像していましたが、短縮版ながら割と本格的なリア王。TGRでも光っていた戸澤さん、安定の納谷さん、藤尾さんの新鮮さなど、見どころや発見も多く、ちょいとやりすぎの歩さんも通常営業(笑)で、自分はこんなにも観劇機会を欲していたのかと再確認した作品。

 

島崎町の選んだ3作品

1.yhs『ヘリクツイレブン』 2020年8月 コンカリーニョ

2020年8月1日のゲネを観た。そのときの雰囲気は忘れがたい。コロナで数ヶ月間、日本中の舞台がストップしたのち、札幌演劇シーズンはなんとか開催となった。感染対策のためにいくつもの手順を踏むんで会場に入ると、そこには舞台があった。演劇が、まだ生き残っていることを知ってホッとした。代表の南参に「どう?」と聞いたら「大変だ」と言っていた。そうだろう。劇団および関係者の勇気と努力に敬意を表し。

2.札幌座『フレップの花、咲く頃に』 2020年8月  かでる2・7

観劇後、なにげなくTwitterで「アイヌ」という言葉を検索してみた。差別発言が出るわ出るわ。これまでもつねに差別の対象だったアイヌは、ネトウヨという新たな勢力の標的になっていた。劇中で描かれていた差別は70年以上たっても消えていない。ネットを媒介にいまも繁殖をつづけている。嫌なことだが、劇と現実が地続きなんだと実感した。その意味でもこの舞台を評価して。

3.劇団コヨーテ『優しい乱暴』 2021年2月 コンカリーニョ

なかなか難解な舞台で評価に困っていたところ、お芝居パートのあとにライブパートがあった。この劇の元となった曲があって、それを歌っている矢野絢子のミニライブだ。2月の札幌、換気のために外気を深々と吸いこんだ劇場、張り詰めた透明な寒さのなかで聴くライブはすばらしく、難解だった舞台が僕のなかに溶けていった。得がたい経験で忘れられない夜だった。その記憶をいまも宿しつつ。

 

しのぴーの「ひとこと」

北海道での新型コロナウイルス感染症の患者第一例は昨年1月28日。くしくも中国武漢市から東京経由で北海道観光に来た中国人女性だった。それから1年と2か月以上が経った。この間、一本の芝居も観ていない。そして、今も舞台表現に関わる全ての人たちが不自由を強いられている。私はといえば、テレワークとはいえ、少なくとも日々仕事があり、収入に不安を感じることはなかった。ただ、生存本能が「極めて危険」と叫んでいるだけだ。あれほど好きだった小屋に入ることに恐怖を感じる小心者だったのは意外だったが。演劇という表現がこの災禍で変わるとは思えない。舞台と観客の間に立ち現れる「劇的空間」はいまだ喘いでいるとしても、台詞の力や俳優の身体性は滅ぶものではないはずだ。乗り越えよう、共に。

 

中脇まりやの選んだ1作品


1.シアターコクーン『プレイタイム』 2020年7月 オンデマンド配信

2020年、人口2500人程度の小さな町に住んでいたわたしにとって、コロナ禍での「オンライン演劇」は喜ばしい試みだった。でも、難しさを感じたのはオンラインでの演劇は、ドラマや映画のような映像作品とは似て非なるものであるというところ。舞台で上演される演劇を、ただ生配信するだけでいいのか。はたまた、ZOOMのように演者も「ステイホーム」しながら展開していくのか。
そんな中、見てよかったと感じた作品が『プレイタイム』だった。
見終わったときに、いいもの見たな、とか、この気持ちはなんだろうとか、今どこにいるんだろうとか、心が浮遊する感じ、こういうものにお金を払いたい、と家にいながらにして思えたのが嬉しかった。
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曖昧になる境界線

 

マサコさんの「ひとこと」

2020年度はコロナウイルスの感染拡大のため、観劇予定の公演がなくなったり、そもそも公演自体が少なかったり…という理由でほぼ観ていない。いくつか「オンライン演劇」とか「配信」ものを観たけれど、「もう一回観たい」と強く思う作品はなかった。そんな中で、10月の石狩支部大会、Twitterでつぶやいていた3月の春フェス(まだ感想を書いていない)などを観て、「高校演劇って面白い」とあらためて実感した(「観る機会があれば、ぜひ観てほしい」ということです)。
そういえばこの前、某市で来年の完成に向けて建設中の芸術劇場を見た。開館までに行われるイベントのチラシをもらったけれど、地方の芸術劇場ってどうして「地産地消」をしたがるのだろう(特に演劇関連)。ムラみたいな環境を変えるには、外から何か・誰かを持ってくるのが効果的だと思うのだけどなぁ。

 

瞑想子の「ひとこと」

記憶に残る3作品は、チェルフィッチュの映像演劇、NTLive『戦火の馬』、hitaruオペラプロジェクト プレ公演 『蝶々夫人』。映像演劇と『戦火の馬』については下記投稿を参照いただきたい。『蝶々夫人』は音楽の迫力とバランス、オペラらしい格とゴージャス感、芯の通った演出、演技・所作、いずれも素晴らしく北海道でこれだけの舞台が作れるのか! という嬉しい驚き。
かつて、演劇は映像で観るものではないと思っていた。けれど技術の進化によって、演劇の映像は単なる記録ではなく劇場の魔術をかなり再現できる装置となっている。映像ならではの良さや映像のほうが楽しめる演劇作品もあるとわかった。ピンチはチャンス。2020年は受難下の試みで「演劇」自体の可能性は拡張されたのでは。
※関連投稿
演出家による支配からの解放、つまり革命①
演出家による支配からの解放、つまり革命②
演劇を映像で観るということ①
演劇を映像で観るということ②

 

やすみんの「ひとこと」

コロナ禍、イギリス各劇場の舞台映像が、私のせめてもの慰めである。特に印象に残った作品は、ジリジリするような息苦しさが伝わるYoung Vicの『熱いトタン屋根の猫』、お馴染みのギリシャ悲劇を現代風にアレンジしたナショナルシアターの『アンティゴネ』、ロイヤルシェークスピア劇団、2014年のいかにもクラシカルな舞台を奥行きを活かして手際よく見せた『リチャード2世』。色々面白い作品を見逃しているな。映像ってありがたい。

 

わたなべひろみ(ひよひよ)の選んだ1作品と「ひとこと」

1. ELEVEN NINES 岸田國士Collection 『命を弄ぶ男二人』『ヂアロオグ・プランタニエ』 2020年12月 ELEVEN NINESスタジオ

2020年年末1回限りのアトリエ公演として行われた若手による岸田國士の戯曲2本。
特にAチーム・Bチームと2組が演じた『ヂアロオグ・プランタニエ』は、初々しさと情念(とまでいかないかもだけど)の対比が一字一句同じ戯曲なのに現わされるのが面白かった。
※関連投稿
立ち止まらず演じることをやめない人たちを観に行く

「ひとこと」

2020年度の1年間で観た演劇は結局、片手に満たない数だった。得体のしれない病に翻弄される生活自体がまるで物語の中。合間にようやく観た数本について改めて考えると、若手の公演が多かった。この状況下でも未来を感じさせる姿を見たいと意識していたのかどうか。
オンラインで演劇を観る機会も増えた。時間や場所の都合であきらめるものが観られる良さもあり、これからますます定着していくのだろうとは思う。でも、やはり、その場で取り返しのつかない瞬間を自分の目でとらえたい。そのためにも、自分も健康でいようと思うこの頃である。

 

有田英宗(ゲスト投稿)の選んだ1作品


1. All Sapporo Professional Actors Selection『北緯43°のリア』 2021年2月 クリエイティブスタジオ

アイヌの自然と意匠がリア王を神々しく北緯43°に立たせた。
人間の野望と宿望を描いてシェイクスピアの右に出るものはいない。齋藤歩の演出は 原作に忠実ながら、得意技の大胆なカットがあり象徴的なシーンを作った。熱演が漲り、権力欲と愛欲が渦巻く修羅場が現れた。そんな中、納谷真大が演じるケント伯爵の清廉が心に残った。

 

熊喰人(ゲスト投稿)の選んだ3作品

1. 劇団怪獣無法地帯『ねお里見八犬伝』 2020年8月 コンカリーニョ

20名も登場するお芝居を久しぶりに観た。これだけ登場すると玉石混淆かなと思ってしまうが、全員が役柄にピタッとはまり、大いに楽しむことができた。そして衣装や効果音も舞台を盛り上げていた。
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痛快な舞台に拍手

2. 弦巻楽団『果実』 2020年8月 サンピアザ劇場

3度目の『果実』。役者さんも馴染みのある方々が多く、ストーリーは分かっていたが不覚にも涙がこぼれ出た。内面の感情とは裏腹に、セリフのトーンを落とした、淡々と語る演出がお芝居を際立たせていた。
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記憶に残る3回目の果実

3. 座・れら第16回公演『空の村号』 2021年2月14日 札幌市こどもの劇場やまびこ座

2度目の『空の村号』。世はパンデミックに翻弄されているが、決して忘れてはならない人災があったことを改めて思い出させてくれた。素直に感情移入できなかった部分はあったが、東日本大震災10年目に上演したことを評価したい。
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ガガゾゾボンバーふたたび

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text by 札幌観劇人

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