心のスーパー銭湯。─即興組合『シアタースポーツ』

「シアタースポーツ」はもうずいぶん久しぶり、2度目の観劇。
マルチスペース・エフ自体ももうずいぶん長い事訪れていなかったこともあり、最初はいろいろ不安もありましたが、スタッフのアットホームな対応に安心。
シアタースポーツは観客参加型(と言っても、人見知り派にも安心な程度の参加ですが)のイベントなので、前説が長いのですが、司会者さんの手慣れた説明で客席はどんどん暖まっていきます。この辺は回を重ねたイベントの良さですね。

観客は事前に渡された紙に、競技中に使われるキーワードやセリフを書いて渡すのですが、これが「競技中にいつ使われるか」を何となく心待ちしているのも楽しい。

今回は2チーム(各3名)の対戦で、前宣伝では「ガチンコ対決」という言葉が使われていましたが、時に相手チームの演目を助けたり(その行為により自チームにも得点が加算される)など、和気あいあいとしたムードで対戦は進みます。

シアタースポーツは各地で行われているようですから、主催側のスタンスによりカラーも違うのでしょうが、即興組合さんの場合は特に「老若男女が、初見でも安心して楽しめる」イベントに仕上がっているようです。
今回は、個人的には「大爆笑」とか「とても感心した」というわけではないのですが、観終ってみると、かなりストレスを発散したまるで温泉あがりみたいな気分になっていました。いや、もっと気軽なスーパー銭湯かな^。

大和田さん(&山崎さん)のミュージカルが楽しかったとか、内容的な感想は多々あるのですが、客観的に見ると「出場者以外の部分(司会、採点など)で、もう少しだけエンタメ性を高められるのはないか」とも感じました。

ただしあまり凝りすぎてしまうと、「老若男女が、初見でも安心して楽しめる」から遠ざかってしまう場合もあるかな。

たとえば、札幌の小劇場での「ショー的イベント」というと、ウェイビジョンの上田龍成さんが精力的に開催している大喜利対戦ライブ【札幌オーギリング】がありますが、こちらは「プロレス的なショースタイル」を打ち出しているので、チーム・個人の遺恨など、ストーリー性を重視しています(奇しくも今回出演のさとしん(佐藤真一)さんがオーギリングにもよく出場していますが)。
これは連続して観戦している場合はとても盛り上がるのですが、いったん観劇の間をあけてしまうと、ストーリーの流れに「とっつきにくい」という面もありますよね。(難しいところです。)

したがって、良い意味での「大いなるマンネリ」も必要なのかなと。

ただ「優勝チーム」が賞賛だけで終わらず、優勝者特典とかも欲しいなあ。皆さんそれぞれ次回公演とかあると思うので、優勝したチームだけ舞台上で宣伝ができるとか。形式上だけでもいいので何か「お楽しみ」がプラスできたら。

また、即興組合さんの「シアタースポーツ」は、参加者をオープンで募集していますが、現実には演劇人が出場しているので、僕としては役者さんならではのインプロ(即興演劇)を見せてもらいたい、とつい欲張ってしまいます。

実は、演じられる即興演劇の各々はとても短編の芝居であり、芝居というより「お題に臨機応変に対応する即興ショートコント」のようになっています。シアタースポーツの性質上仕方ないことでもあるのですが、本来「笑いを取った方が勝ち」というルールではないはずなので、個人的には役者さんならではの演技に感心したり、時には泣ける芝居なんかも観てみたいなあとつい思ってしまいました。
(欲張り過ぎですがね。)

2017/7/1(土)14:00 マルチスペース・エフにて観劇
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即興組合 第23回公演 シアタースポーツ
※「シアタースポーツ」とは、国際シアタースポーツ協会(ITI)がライセンス管理しているインプロ(即興演劇)
のショースタイル。3~5人の複数のチームで数一男即興演目にチャレンジし、ジャッジが点数をつけて競い合うというスポーツ感覚の演目です。

2017/6/30(金)~7/2(日)

【出演】
<即興組合>岡田みちよ ニコラス 山崎孝宏 山田ともる
<劇団リベラルシアター>大和田舞 佐藤真一 Chihiro 山田ひかる

【特別ゲスト】遠藤雷太(エンプロ)
【司会】田村正和
【スタッフ】大津充敬 川西敦子 佐藤紫穂(ex.fiction) 高橋由衣

text by 九十八坊(orb)

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