TGR2023回顧録(1)――演劇家族スイートホーム『いつか、いつだよ』

遅くとも1月中には全作品の感想をまとめようと思っていたのですが、あれやこれやで手をつけるのが1月末日となってしまいました。。。
すでに誰得かって話ですが、アーカイブしておくこと自体に何らかの意味があると考え、遅まきながら本日からなるべく毎日少しずつアップしていこうと思います。

観劇順にまずはスイートホームさんから。
なお、今回のTGRで審査員に加えさせて頂いていたわけですが、ここに記すのはあくまで個人的な感想であり、文責はすべて僕個人にあります。

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すでに社会人としての日々をおくっていた主人公が、過去にタイムスリップしてコロナ禍の高校生活を過ごすことになる、という滑り出し。
例によって事前情報を仕入れずに拝見しているので、タイトルとテーマについての関連性も深く考えず、
序盤は「果たしてこのお話はどこへ向かうのだろう」といまひとつ掴みどころがないままに物語についていった、という感じではありました。
。。。とは云え、興が乗らなかったというわけではありません。特に序盤は、竹道さんの主役としての魅力が物語を引っ張っていたと思います。

部活という具体的なアクションを通して、「青春をあきらめないこと」をまっすぐに描いた脚本に好感。「あの頃」の閉塞感の中で、大人側からモノを考え、諭そうとする八木先生(高橋さん)がいかにもという感じで、やんわりと部員たちを諦めさせようとするセリフの積み重ねが効いてくる(いや、いい先生なんだけどね。その辺のさじ加減もよかった)。
そして堰を切ったように生徒から発せられる「思い出を作りたいんじゃない」というセリフにハッとさせられました。

(いつかいい思い出になる)――――コロナ禍じゃなくても問い返したい。「いつかって、いつだよ」と。

題材をまっすぐに描き切った脚本。そしてクライマックスは理屈抜きに素敵でした。

個人的に気になったことをあげさせて頂くと、100分程の作品で序盤で30分近く費してしまうのは惜しい。特に、「死神」「生き返るチャンス」「過去へタイムスリップ」といった個々の設定はありふれた側面もあるので、もっと状況をタイトに伝えて物語を展開させ、先への興味とともに観客を手早く巻き込むのも脚本のウデの見せドコロかと思います。また、劇伴の助けをもう少し借りた方が場転がスムーズだったかなとも思いました。
コロナ禍で皆がマスクしているのは当然として、制服にマスクでは背格好が似通った登場人物の見分けが少々混乱する場面もありました。観客は必ずしも、それぞれの役者さんを事前に認知している人ばかりではないので、見分けが容易なアイテム(派手なカーディガンとか)がもっとあってもよかったかなあと。細かい部分で恐縮ですが。

<主観的絶対評価>
直球度★★★★★……誰もが「いつだよ」と共感できる脚本。マスクで表情が見えなくてもちゃん伝わってくる演技
主役の魅力★★★★☆……瞳の力が印象的
アフターイベント★★★★★……いやあ楽しすぎました(笑)

2023/11/3(金) 19:00 シアターZOOにて観劇
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演劇家族スイートホーム 第7回公演『いつか、いつだよ』
2023/11/3(金)~4(土)
脚本・演出:髙橋正子
【キャスト】
菊地 健汰
竹道 光希
本庄 一登
湯本 空〈以上劇団員〉
目黒紅亜(ウェイビジョン)
髙橋 雲(ヒュー妄)
服部 一姫(札幌表現舎)
古谷 華子(Compagnie “Belle mémoire”)
【スタッフ】
照明:手嶋浩二郎(夕凪)
音響:渥美光(劇団うみねこ)
舞台美術:河合華穂
制作:湯本空、山田雄基
スタッフ:山崎未、五島基愉

text by 九十八坊(orb)

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